世界の記述

2020年6月15日

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井上雄介 (いのうえ・ゆうすけ)

台湾ライター

1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。天津南開大学へ留学経験あり。共同通信記者、時事通信上海支局勤務、衆院議員政策秘書などを経て現在に至る。

 米商務省は5月15日、米国製ソフト技術や半導体を使う外国企業に、中国の通信設備・端末メーカーのファーウェイ(華為)との取引を禁止した。ファーウェイへの事実上の禁輸措置により、台湾を代表する半導体ジャイアント2社の株価は明暗が分かれた。

 ファウンドリー(半導体の受託製造企業)で世界の覇者、台湾積体電路製造(TSMC)は直後に株価が急落した。TSMCの売上高全体の15~20%をファーウェイが占めるが、米国の技術を使っているため、これを一気に失う恐れがあるからだ。 

 米中が、貿易紛争や新型コロナウイルスの感染拡大、香港の治安法制をめぐり対立を深める中、TSMCは主力工場の米国での建設を発表し、米国重視を旗幟(きし)鮮明にしている。

(REUTERS/AFLO)

 一方、携帯端末電話用半導体のファブレスメーカー、聯発科技(メディアテック)は、株価が急騰した。米国の禁令で、中国本土からの受注を増やすとみられたためだ。

 ファーウェイは来年に発売を予定している、ローからミドルエンドの5G対応スマートフォン用の半導体を、TSMCに変わってメディアテックから調達するとみられている。小米(シャオミ)、OPPO、ViVOなど、中国の他のスマホブランドもメディアテックから調達する可能性が高い。

 メディアテックは台湾のIT業界で、TSMCや、EMS(電子機器受託生産)世界最大手の鴻海(ホンハイ)精密工業と並ぶ有名企業だ。中国の低価格、ノンブランドのスマホメーカーを相手に、コスパの高いチップセットを売り成長を遂げた。高い技術力を誇り、世界的な寡占企業の一角であるTSMCとは同格ではない。米国が安全保障上マークする企業でもないことが幸いで、米中対立の中、台湾勢で勝ち組に入るとの見方もある。

 だが、ネットメディア「上報」によると、アナリストの林若伊氏は、長期的に勝ち組に入るのは、米国側に付いたTSMCとみる。米国の禁令で、ファーウェイは先進的な半導体を入手できなくなり、国際競争力を失う可能性が高いためだという。TSMCが中国での売上を減らすのは一時のことだ。

 林氏は一方で、メディアテックは結局、世界での競争力を低下させるとみる。ファーウェイの失速と、中国で半導体の国産化が進むことで、中国市場でのシェア縮小は必至である上、中国傾斜で米国からの受注も減る恐れがある。 

 もっとも台湾誌「天下雑誌」によれば、米商務省の禁令は120日の過渡期があり、TSMCがファーウェイから過去に受注した分の生産が続いており、ファーウェイが打撃を受けるのは、早くても来年以降になるだろう。また、別の報道によると、メディアテックは、ファーウェイから大口注文の打診を受けたものの、まだ回答してないようだ。TSMCもメディアテックもしたたかに、米中対立の行方を見守っているのかもしれない。

  
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