世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年5月29日

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 WHO(世界保健機関)の年次総会が5月18日から開催された。それに先駆け、豪州のスコット・モリソン首相は、新型コロナウィルス(COVID-19)に関する独立した調査を求める発言をした。モリソン首相は、WHOの高官が病気の発生の調査に各国に査察官として入国することを提案した。

Maksym Kapliuk450/iStock / Getty Images Plus

 これに対して、中国は、快く思わなかったらしい。豪州からの牛肉輸入の3分の1にあたる生産者からの輸入を禁止し、大麦に高関税をかけると脅した。

 この件に関して、5月12日付のウォールストリート・ジャーナル紙が「オーストラリアと中国の牛肉:北京は世界的なCOVID-19調査の呼びかけに貿易制裁で応える」との社説を掲載し、中国の豪州に対する貿易制裁を批判した。

 このウォールストリート・ジャーナル紙の社説は的を射た良い社説である。 新型コロナウイルス問題についての中国の対応には、驚愕させられることが多い。

 上記に示された通り、まず、新型コロナウイルスの起源を調査しようという豪州の提案に対して、経済的報復ともいうべき措置を講じていることが挙げられる。次に、米軍がこのウイルスを持ち込んだとの偽情報を外務省の副報道官に流させ、それを長期にわたって否定もせず放置したことがある。また、中国は、新型コロナウイルスの制圧に努め成功して世界への感染拡大を遅くするなどの貢献をしたとの宣伝活動をしたことなど、極めて遺憾な振る舞いをしている。おそらく、新型コロナウイルス・パンデミックについての調査を行うと、習近平政権の初期対応が不適切であったということになりかねず、習近平政権の安定性にも影響を与えかねないとの心配があるのではないかと勘繰っているが、いずれにしても中国の体制の異質性を示している。中国は、中国の考えに反対する国には経済的不利益を与えると脅すことが多いが、この豪州の件はその脅しを現実化した事例である。 

 中国がこういう振る舞いをする以上、中国は経済的パートナーとして信頼できない。従って、中国との経済関係を今以上に深めていくことには慎重であるべきで、中国との経済的ディカプリングをできる範囲で進めていくことが適切ではないかと思う。

 尖閣諸島の国有化の際に、中国がレアアースの対日輸出を制限して日本を困らせたことは記憶に新しい。サプライチェーンについても、中国に依存する度合いを下げていくべきであろう。 

 5月18日よりのWHO総会では、新型コロナウイルス問題は大きな課題になった。今回、新型コロナウィルス対策を比較的上手く管理してきた台湾がWHOの活動から排除されていることも問題である。総会に台湾をオブザーバーで呼ぶことは、WHO事務局長が、馬英九政権時代にはやっていたことであるが、今のテドロス事務局長は加盟国が決めることであるとして招請状発出を拒否している。中国は台湾の出席を阻止すべく、根回しをアフリカ諸国などにしている。公衆衛生に関わる問題は、政治的に扱われるべき問題ではない。 

  
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