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2020年6月18日

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伊藤公一朗 (いとう・こういちろう)

シカゴ大学公共政策大学院准教授

シカゴ大学公共政策大学院准教授。京都大学経済学部卒、カリフォルニア大学バークレー校博士。ボストン大学助教授等を経て、2015年より現職。専門は環境エネルギー経済学、産業組織論、応用計量経済学。著書に「データ分析の力」(光文社)など。

 通勤電車やランチタイムの飲食店など、需要の高い時期や時間帯の公共の場は、混雑がつきものだ。ウィズコロナの時代に、そんな社会的混雑を避けることを目的として、価格変動によって需給のバランスを図る「ダイナミック・プライシング」の技術が今、再注目されている。エネルギー経済学を専門とするシカゴ大学公共政策大学院の伊藤公一朗准教授が語る、公共インフラにダイナミックプライシングを導入することのメリットや気をつけるべき点とは。

 価格変動は交通渋滞や非効率な電力消費を解消する力を秘めている。ダイナミックプライシングの導入によって公共インフラの低コスト化や効率化といった社会課題の解決を図ることができるのだ。需要と供給のバランスによって価格が決まるということは、裏を返せば、価格を上下させることによって需給の調整が図れることを意味する。

米国の高速道路の一部ではダイナミックプライシングの導入が進んでいる (ANDREI STANESCU/GETTYIMAGES)

 例えば、朝の通勤時間帯を考えてみよう。ピーク時間帯で鉄道運賃や高速道路料金を上げ、その前後の時間帯では逆に下げることで、利用者に対して価格の安いピーク前後の時間帯での移動を促し、通勤混雑の解消につなげることができる。

 日本でも、高速道路において昼間と深夜帯で利用料を変更したり、飛行機や新幹線では繁閑期によって料金に差を設けたりするなど、需要に合わせた変動価格自体はこれまでも公共交通に導入されてきたが、データの収集および分析の精度が向上したことで、より精緻かつ弾力的にプライシングができるようになった。

 米国ミネソタ州の高速道路では交通渋滞の緩和を目的としたダイナミックプライシングの導入が進んでいる。高速道路の利用料は基本的に無料だが、4~5本ある車線のうち「エクスプレスレーン」と呼ばれる一番端の優先車線のみ有料となっている。約1.5キロごとに区間が分かれ、レーン上部に設置された電光掲示板にその先の区間料金が表示される。表示料金は需給に応じて3分ごとに変化していく。

 区間ごとに設置されているセンサーが30秒間に通過する車の台数を測定し、過去6分間の交通量に応じてその先の3分間の料金が決定される仕組みだ。1区間25セント(約27円)が下限料金だが、車線の混雑とともに25セント刻みで上昇し、8ドル(約864円)を上限料金として32段階の料金設定が存在する。

 交通量の増加に応じて料金が上がることでエクスプレスレーンが空(す)いている状況を維持し、高い料金を払ってでもいち早く目的地に到達したいといった利用者の需要を満たすことができるのだ。

 ミネソタ州交通局の報告書によると、この仕組みを導入した効果でピーク時間における混雑が25%緩和されたという。現在はセンサーを利用して交通量を測定しているが、携帯電話などのGPS位置情報を活用すればさらに詳細なプライシングが可能となる。

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