ハリス上院議員、アトランタ市長らが有力に
副大統領候補選びは現在、バイデン氏が指名した「副大統領候補選定委員会」で着々と進められている。ニューヨーク・タイムズなど米有力紙によると、委員会は民主党元上院議員や元ロサンゼルス市長ら4人で構成され、これまで十数人の候補者と面談し、政策やバイデン氏との相性など約130項目にわたって聴取した。
この結果、最有力候補は4人の黒人女性に絞られた。カマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州選出)、バル・デミングス下院議員(フロリダ州選出)、ランス・ボトムズ・アトランタ市長、スーザン・ライス元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の各氏である。
ハリス上院議員はバイデン氏とともに、民主党の大統領候補指名争いにも出馬。途中で撤退し、バイデン氏支持を表明した。ホワイトハウスのダースベーダーと言われたスティーブン・バノン元首席戦略官が来日した際、筆者に「民主党候補の中で、トランプ氏の最大の脅威はハリス議員」と語っていたように、見識もある。州司法長官だっただけに白人警官による暴力の実態にも詳しい。
ワシントン・ポストによると、バイデン氏の何人かの側近は「ハリス氏がベスト」との見方を強めているという。しかし、一部には同氏に対する抵抗感も残っている。民主党指名争いで、バイデン氏に辛辣な攻撃を仕掛けていたからだ。「目立たたないことが最大の仕事」(専門家)といわれるほど、副大統領は大統領の影に隠れる存在でなければ務まらない。ハリス氏に、自分を殺すことができるかどうか。この点への懸念が大きいのかもしれない。
デミングス下院議員はフロリダ州のオーランドで女性初の警察署長を務め、政界入りした人物。フロリダ州は共和、民主の勝敗が選挙のたびに入れ替わる最大のスイング州で、トランプ、バイデン両陣営にとっては絶対に落とせない州だ。デミングス議員を選べば、バイデン氏は同州で優位な戦いを進めることができるだろう。
ランス・ボトムズ・アトランタ市長は若手の有望株。抗議デモのきっかけとなったミネアポリスの黒人暴行死事件について、白人警察官の暴力やトランプ大統領の対応を厳しく批判して一躍注目を集めた。アトランタで起きた12日の黒人射殺事件では、警察署長をすぐに辞職させるなどの素早い対応を取っており、南部の黒人票を固めたいバイデン氏にとっては、同市長を選ぶ意味は大きいものがある。
スーザン・ライス元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はオバマ政権で国連大使の後、大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めた。外交の専門家だが、2012年のベンガジ米領事館襲撃事件の際の対応のまずさが批判されており、副大統領候補になれば、トランプ氏がその点を攻撃してくるのは間違いない。
この他、「副大統領候補選定委員会」が面談した候補には、指名争いでバイデン氏と戦った白人のエリザベス・ウォレン上院議員(マサチューセッツ州選出)らがいる。同議員はバイデン氏と最後まで指名争いを競ったバーニー・サンダース上院議員と同じくリベラル派。若者に人気があり、若者からの得票には力を発揮するだろう。バイデン氏は8月1日ごろ、正式に副大統領候補を発表するとしている。
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