2022年10月6日(木)

立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2020年8月3日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

 台湾承認、米台国交樹立の可能性

 「distrust and verify(信用しないこと、かつ検証すること)」。ポンペオが打ち出したワシントンの新しい対中共基本姿勢である。米ソ冷戦時代のレーガン米大統領が対ソ姿勢に「trust but verify(信用するが、検証もする)」を提唱していたが、これと比べると、いまの米国は中国共産党をかつてのソ連よりも敵視しているように思える。

 米中間の信頼関係がほぼ失われた。崔天凱駐米中国大使は7月21日「今(米中間)対話すらできない」と嘆き、そして少し遡っての7月9日、王毅中国外務大臣は「(米中間は)対話チャンネルを復活させるべきだ」と呼びかけていた。一連の発言を裏返せば、現状がいかに深刻かが分かる。

 では、早い話で、これからトランプ政権はどんな手に打って出るのか。概ね5通りのシナリオを描けるのではないかと考える。

 まず国際政治・外交面では、台湾の国家承認と米台国交樹立。

 実務的に、あたかも無謀な選択肢であるかのように見えても、論理的な根拠の基盤はできている。当面の経済的利益よりも優先すべき上位要素を考えれば、イデオロギーや普遍的価値観を共有しているのは台湾であり、「棄中連台」は当然の政策選好になる。サプライチェーン(供給網)の脱中国化がすでに着々と進んでいるわけだから、むしろ経済面の条件も整いつつあるといってよかろう。

 障害は何かというと、「1つの中国原則」。ただ、留意してほしいことがある。中国は「1つの中国原則(One China Principle)」といっているが、米国はあくまでも「1つの中国政策(One China Policy)」にとどまっている。メディアでも両者をよく混同させているが、まったく別物である。「原則」は変えられないものであるのに対して、「政策」は調整可能である。

 米中コミュニケでは、「アメリカ合衆国は中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府であることを承認し、中国はただ1つであり、台湾は中国の一部であるとの中国の立場をアクノレッジした」と、「立場のアクノレッジ」という表現にとどまり、解釈と運用上の柔軟性がもたされている。

 さらに米中コミュニケという国際条約云々の議論になると、中国は香港国家安全維持法を制定したことで同じ国際条約の中英共同宣言に違反したという問題(イギリスがそう主張している)を抱えている以上、決して立場的に強いとはいえない。現にトランプは米中コミュニケを破棄して台湾と軍事同盟を組み、米軍の台湾進駐を目論んでいるのかもしれない。

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