2022年12月9日(金)

立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2020年9月1日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

リスキーすぎる、インバウンド1本の商売

 国境閉鎖。マレーシアとタイが全面戦争でもしなければ、あり得ない話だった。誰も予想しなかった災厄の降臨、コロナでついにこれが現実となった。半年ほど閉鎖された国境はこれからも当面再開の目途が立っていない。国境ビジネスを生業とする人たちは生計の道を断たれた。まさかこんなことになるとは誰も思っていなかった。あり得ないことだった。この時代に「未曽有」や「予想外」の出来事が次々と発生している。

 インバウンドとは海外観光客と国内(他地域から訪れる)観光客という2種類の客を指している。国境閉鎖によって海外観光客が遮断された以上、国内客はやってくるかというと、ランタウ・パンジャンのような観光資源皆無の地域は絶望的だ。地元ではただひたすら「国境再開」を待ちわびている。いかに他力本願であろうか。コロナが終息しない限り、国境は再開されない。少なくとも回復期活動制限令(RMCO)の延長で年内は絶望的だ。ランタウ・パンジャンの住民はどうサバイバルするだろうか。

 インバウンドに頼るビジネスの危険性が、今回のコロナ禍によって浮き彫りにされた。これは何もマレーシアに限った話ではない。日本もコロナまでは、中国人などの海外観光客消費、いわゆる「爆買い」を当て込んだ。中国経済の低迷とコロナの二重ショックが相まってブームが幻の過去になってしまった。

 単一業種や単一顧客層に特化したビジネスやそれを得意とする企業や個人スペシャリストは、一般的に経営学では「善」とされている。しかし、コロナという災厄でこの常識が覆された。マーケティング学の「セグメンテーション」という概念は市場細分化を意味するが、いざ当て込んだ顧客層が全体的に消滅した場合、ビジネスの消滅をも意味する。インバウンドはまさにその好例である。

 先日あるビジネスセミナーでこの議論になったところ、「では、これからの時代はどんな商売をやったらいいのか」という質問が出た。正直分からない。今まで、何とか専門家やプロになったり、何とか資格を取ったりすれば、ある程度の職業的な保障がついたのだが、この常識は覆されたのである。コロナのような予期せぬ「悪」の災厄だけでなく、「善」とされているAIの発達もわれわれの仕事や職業、ビジネスを奪い去る。

 資格も安心できない。文科系資格の頂点とされる弁護士資格はどうかというと、実は法律や判例の調査や助言がロボット・AIの高度化によって可能になれば、弁護士も生活の糧を失いかねない。某弁護士と雑談して今後どんな弁護士が生き残れるかというと、たとえば殺人など凶悪犯罪者のための専門弁護を得意とする刑事弁護士とか、経営者以上に経営に詳しい企業法務弁護士とか、そうした特殊な弁護士しか生き残れないというのだ。

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