2024年12月4日(水)

食の安全 常識・非常識

2020年9月22日

手洗い効果か? 食中毒は減っている

山本 食中毒の発生状況を見ると、2020年の寒い時期はノロウイルスが少なめ。ほかの菌による食中毒も減っているようです。やはり、多くの人が手洗いをしているのが効果を上げている、と思います。ところが、飲食店が再開した6月以降は、カンピロバクターの食中毒が目立ってきました。多くは鶏肉の生食が原因です。鶏刺しや鶏たたき、鶏レバ刺しなどです。

松永 カンピロバクターは、感染して治った後にギランバレー症候群を発症する人がいる、とされています。手足の麻痺や呼吸困難など、怖い病気です。新型コロナと同じぐらい深刻な問題だと思いますが、いまだに生食用の鶏肉ではないものを生で提供する飲食店があり、それを食べる人たちがいる。新鮮な鶏肉であれば安全、という間違いを信じ込んでいる人もいるようです。

山本 新型コロナと同じように、食中毒にも十分に注意してください。もっとも重要なのは基本的な手洗いです。石けんで30秒〜60秒もみ洗いし流水で15秒すすぐ。これを2度繰り返すと効果的です。公共のトイレなどで見ていると、どうも手を洗うのではなく濡らしているだけ、という人がいます。

松永 30秒とか60秒というのは思った以上に長く感じられて、なかなかできません。

山本 そうですね。海外では、ハッピーバースデーの歌を2回歌って、その間は手を洗いましょう、と言っている国もあります。

出典:精講:食品健康影響評価のためのリスクプロファイル〜ノロウイルス〜 写真を拡大

松永 手洗いが最大の防御だ、ということを忘れないようにしなければ

山本 新型コロナウイルスに関しては、これまでと同様に手洗い、マスク、人と身体的距離をとる、そしてクラスターの発生を防ぐために三密を避けるなど普通の対策を。ほかの菌やウイルスによる食中毒対策としては手洗い、食品をしっかり加熱。エコバックは肉汁などが付くと菌が繁殖するのでこまめに洗濯を。食品安全委員会でも、ウェブサイトに「新型コロナウイルス感染症と食品について」というページを作り情報を提供しています。ノロウイルスについても、「食品健康影響評価のためのリスクプロファイル」を作り公表しています。新しい研究成果にも対応して内容を更新し、詳しく説明しています。そのほかの食中毒を引き起こす細菌などについても性質や対策を解説していますので、見て役立ててほしいです。

松永 詳しくご説明いただき、どうもありがとうございました。

<参考文献>
UN Web TV・Maria Van Kerkhove & Michael Ryan (WHO) - Food Safety (COVID - 19) (Geneva, 13 August 2020)
http://webtv.un.org/watch/maria-van-kerkhove-michael-ryan-who-food-safety-covid-19-geneva-13-august-2020/6180859357001/

食品安全委員会・新型コロナウイルス感染症と食品について
https://www.fsc.go.jp/sonota/covid_19.html 

Kampf G, Todt D, Pfaender S, Steinmann E. Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents. J Hosp Infect. 2020 Mar;104(3):246-251. 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7132493/ 

Rabenau HF, Cinatl J, Morgenstern B, Bauer G, Preiser W, Doerr HW. Stability and inactivation of SARS coronavirus. Med Microbiol Immunol. 2005 Jan;194(1-2):1-6.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7086689/ 

食品安全委員会・食品健康影響評価のためのリスクプロファイル
https://www.fsc.go.jp/risk_profile/ 

食品安全委員会・精講:食品健康影響評価のためのリスクプロファイル〜ノロウイルス〜(東京会場 2回目) 
https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20191216ik1

  
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