2024年11月22日(金)

解体 ロシア外交

2012年8月3日

 これらのインフラが整備されれば、ロシアの実効支配が進むのは間違いない。6月28日からの国後・択捉両島を訪問していた「北方領土ビザなし訪問団」も、道路や港湾などのインフラ整備が急速に進んでいることと、韓国や中国企業の進出の目覚ましさについて報告しており、北方領土のロシア化が顕著に進んでいるのは確実だ。

玄葉外相訪ロ  乏しい収穫

 さらに、7月28日からは玄葉外相が訪ロし、ロシアの南部ソチ(2014年冬期オリンピック開催予定地)でラブロフ外相、プーチン大統領と相次いで会談した。7月3日のメドヴェージェフの国後島訪問を受け、玄葉外相に訪問中止を進言する声も少なくなかったが、玄葉外相は、交渉継続の重要性を強調し、訪問の意思を変えなかったという。

 ロシア外相、首相との会談では、やはり北方領土問題に多くの時間が割かれた。たとえば、外相会談は1時間40分に及んだが、そのうち、3分の1が北方領土問題の議論に当てられた。

 しかし結局両会談とも、日ロ間に領土問題があること、そして今後に様々レベルの協議を同時並行で継続していくことが約束された一方、両国の認識の「開き」も再度確認され、今回の外相訪ロが、問題解決に向けて何ら進展をもたらさなかったのも事実である。

1:6月18日午後(日本時間19日未明)に、野田首相とプーチン大統領が、初の首脳会談を行ったが、そもそも会談時間が30分と短かった上に、交渉継続については合意が得られたものの、やはり北方領土問題に対する両国の顕著な開きが明らかとなっていた。

日ロ双方の思惑

 それでも、ロシア側が、玄葉外相に対して異例の厚遇をし、カウンターパートとなるラブロフ外相のみならず、格上のプーチン大統領との会談までセッティングした背景には、メドヴェージェフ首相の国後島訪問で再び緊張した対日関係のさらなる悪化を食い止めたいロシア側の思惑があるといえそうだ。

 現在、ロシアは、日本との経済協力拡大を特に重視している。プーチン新政権は、シベリアと極東の開発・発展を極めて重視しており、また、9月にウラジオストクで主催するアジア太平洋経済協力会議(APEC)サミットを機に、アジアに重点を置く外交政策をより深化させていく意向だ。それらの目的達成には、極東やシベリアへの日本の投資や技術協力を得ることが極めて重要となるというわけだ。

 つまり、当面は領土を返還するつもりはないが、まずは、経済・技術・人的交流を拡大することが、領土問題を解決する上での最低限の前提だというロシアの立場は不変だといえる。

対中対策で連携を

 他方、玄葉外相は交渉を進める上で「より良い環境」を整備していくために、経済・技術協力のみならず、ロシアが恐れている中国のアジアにおける台頭への対策を想定した海上安全保障の連携強化、メドヴェージェフ政権時代から顕著に進められるようになったロシア国内産業の近代化への支援など多角的なアプローチを継続していく方針を示している。


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