2024年4月27日(土)

WEDGE REPORT

2020年11月7日

沈む泥船に乗るものはいない

 トランプ氏が再選に失敗すれば、現職大統領としては1992年のブッシュ大統領(父)以来のことになる。同氏は声明で「絶対に諦めない」とあくまでも法廷闘争に持ち込んで大統領職に留まる構えだが、その立場は一段と厳しくなっている。身内の共和党も選挙結果を率直に認めようとしない大統領の姿勢には批判的で、支持を表明しているのは大統領の盟友グラム上院議員、クルーズ上院議員ら一部に限られている。

 トランプ氏はかねてから「不正の温床」として郵便投票への反対を表明し、法廷闘争への布石を打ってきた。しかし、トランプ陣営が集計停止を求めて提訴したミシガン州では、州裁判所が既に訴えを退けた。ジョージア州でも到着期限以降に届いた無効票が紛れ込んだとして訴えを行ったが、これも却下された。

 ペンシルベニアでも提訴しているが、こうした試みが成功する見通しは明るくない。最終的には連邦最高裁にまでもつれることになるだろう。

 トランプ氏は5日のホワイトハウスでの会見で、「合法的な票では、私が容易に勝っている。民主党は選挙を盗もうとしており、不正は許さない。郵便投票は腐敗した制度だ」などと、民主党やメディアに怒りをぶちまけた。しかし、「不正選挙」の証拠は一切示しておらず、3大ネットワークは「事実がねじ曲げられている」として会見の放送を途中で打ち切った。

 CNNとFOXニュースは中継を続行したが、大統領に厳しいCNNは無論のこと、FOXも「不正の確かな証拠はない」と批判した。バイデン氏のスキャンダルを書き、大統領寄りのニューヨーク・ポスト紙も「落ち目のトランプ、根拠なき主張」との見出しを掲げた。

 共和党からの批判も強い。米メディアによると、サントラム元上院議員はトランプ氏の発言を「危険で衝撃的」と述べ、ケーシック元オハイオ州知事やクリスティ元ニュージャージー州知事らも「愚かな発言」「根拠に乏しい」などと手厳しい。

 四面楚歌のような大統領に対し、トランプ氏の長男ジュニア氏と次男のエリック氏がツイッターで、「大統領支持に立ち上がって不正と戦おう」などと、必死の呼び掛けを行ったが、同調者は少ない。大統領の周囲はペンス副大統領らが大統領を積極的に助けようとしないことに不満を強めているようだが、「沈没しつつある泥船に乗ろうとする者はいない」(アナリスト)との声もある。

 今後、共和党内部でもバイデン氏の大勝が確定的になれば、「裁判で徹底抗戦するという大統領の主張は通らない」との声が高まるのは必至。その場合は、権力にしがみつこうとする大統領を誰が説得して降ろすのかが焦点になってくるかもしれない。「トランプ氏の首に鈴をつけるのは誰なのか」。水面下の動きにも注意が必要だ。

  
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