世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年12月1日

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 米印の安全保障関係は、これまでで最も公式の同盟に近づいた状態にあると見られている。トランプ政権下で、米国は、インドとの安全保障関係の緊密化への道を固める、防衛、兵站、諜報共有に関する一連の協定に署名した。バイデン政権になると、こうした強固な米印安全保障関係がどうなるのか、注目される。

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 米印関係に関連してインドに影響を与える要因として考えられるのは、中国の政策と米国の対中姿勢である。中国の政策については、ヒマラヤでのインド領侵略やインド軍との衝突に見られた中国の拡張主義は今後とも変わらないものと見ていい。米国の対中姿勢に関しては、バイデン政権がどのような政策を実施するかが問題となる。基本的に対中国政策はバイデン政権でそれほど優先度が高くないように思われる。バイデン政権移行チームが優先課題として挙げたのは、新型コロナウイルス、経済回復、人種平等、気候変動の4つであり、対中国政策についての記述はない。

 その中で、バイデン政権の対中国政策はどのようなものとなるであろうか。ワシントンでは中国は米主導の世界秩序に対する脅威であるとの認識が党派を超えて広がっており、米議会には超党派の反中感情があると言われる。バイデンはその中にあって、選挙中中国政府の香港での行動を激しく非難し、新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する中国政府の政策を「受け入れ難い」と述べた。

 他方、バイデンの有力な側近で次期国務長官に指名されたアントニー・ブリンケン元国務副長官は、「中国との完全なデカップリングは非現実的で、結果的に逆効果だ」と述べており、中国の技術面、産業面での台頭は抑え込むが、気候変動、核不拡散、ウイルス対策などでは中国と協調して動くことを示唆している。バイデンはトランプのように中国を「敵対国」として直接名指しすることはせず、同盟国との協調の中で、中国に国際ルールを遵守させようとするのではないかと考えられる。

 中国を敵視したトランプの下でインドは米国との安全保障面での関係を緊密化させたのであり、バイデンの中国政策の下では、インドは米国とのこれ以上の安全保障面での関係の緊密化に二の足を踏むかもしれない。バイデンは中国に対し基本的に厳しい姿勢を保ちつつ中国との関係の調整に乗り出すことも考えられるが、同時にそれがインドを疎外することの無いよう細心の配慮をすることが求められる。

 中国が東、南シナ海への進出を強化するにつれ、インド太平洋の重要性が改めて認識されることとなった。「自由で開かれたインド・太平洋」にとってインドが重要な地位を占めることは言うまでもない。バイデン政権は引き続きインド太平洋を重視すると考えられるので、米印関係が公式の同盟関係になるか否かに拘わらず、米国はインドを引き続き重視することとなると見られる。

  
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