世界の記述

2020年12月10日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

 米大統領選挙で、民主党バイデン氏の勝利がほぼ確実となった。米国との関係修復を目指す欧州では、民主党政権移行を歓迎する声と、トランプ共和党政権敗北に落胆する声に分かれた。今後の米欧関係はどうなるのか。

Oleksii Liskonih / iStock / Getty Images Plus

 フランスのマクロン大統領は11月10日、バイデン氏に祝辞を述べ、「気候、保健、安全保障など、優先事項の促進を協議したい」と提案。ドイツのメルケル首相は9日、「米国と欧州は、21世紀の同盟の責任を果たさねばならない」と伝えた。

 過去4年間で、欧州連合(EU)と米国の関係は冷えきったものの、バイデン新政権では、再び強化される見通しだ。米国とEUの国内総生産(GDP)を合わせると、世界全体の約50%を占める。

 ウェーバー欧州議員は、今後10年間で「中国人ではなく、われわれ(欧米人)が未来のルールを作るべき。平等な条件でプレーすることを中国に義務付けることが大事だ」と述べ、米国の対中外交を意識した言動を示した。

 ボレルEU外務・安全保障政策上級代表は、バイデン氏の勝利は「トランプ政権によって失われた気候変動のパリ協定と、イラン核合意をいち早く取り戻せることだ」と意気込んでいる。 

 ドイツの世論調査会社「ベルリン・パルス」の調査によると、回答者の78%が「トランプ政権で関係は悪化したが、バイデン氏で正常に戻る」との考えを示している。事実、オバマ政権時代に副大統領だったバイデン氏は欧州を訪問した2015年、「EUと米国の関係は、民主主義の柱である」と強調していた。

 現状のEU体制はバイデン氏寄りだが、一方で、自国第一主義やEU懐疑派の急進右派やポピュリズム(大衆迎合主義)政党の政治家にとっては、トランプ大統領の退任は痛手となる。

 近年、欧州では、イタリアの「同盟」、ドイツの「AfD」、フランスの「国民連合」など、各国でポピュリズム政党が台頭。リベラル批判や排外主義を進めたトランプ大統領は、EUポピュリストの代弁者としても人気があった。

 「欧州のトランプ」と呼ばれるハンガリーのオルバン首相は、バイデン氏の勝利に対し、「残念だ。前回の民主党政権より良くあってほしい」と皮肉った。

 ポーランドは、EU圏内で唯一、国民の大半がトランプ大統領を支持している。今年6月、トランプ大統領はドイツにいる駐留米軍のポーランド一部配置を決定したが、バイデン氏当選で再び撤退の可能性があり、国民が不満を抱いているという。

 EU離脱を牽引した英国のジョンソン首相も、トランプ大統領と2国間の自由貿易協定(FTA)を視野に入れてきた。しかし、民主党政権への移行で、対EU路線復帰が免れない状況となった。

 米国との協調が先か、それとも、欧州分断の防止が重要か、EUそのものが大きな決断の時に差し掛かっている。

  
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