Wedge REPORT

2021年1月16日

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(ksenija18kz/gettyimages)

 取材当日の午後、新宿区山吹町の空には、青空が広がっていた。そんな空を眺めながら「こういう天候だとアクセスが少ないんです」と、苦笑いするのはALiNKインターネット(新宿区、以下アリンク)代表の池田洋人さん。

 アリンクは2013年5月設立で、19年12月に東証マザーズに上場した。主な事業は「tenki.jp」の運営だ。なんとこのサイト、年間の総PVが約48億PVある、日本でも有数の気象サイトだ。さらに、ツィッター280万フォロワー。法人アカウントのなかでは5位くらいだそうだ。

 池田さんは、ヤフー出身で、現在のヤフー天気を完成した人物として知られる。取得難関といわれている気象予報士の資格を持っているが、気象庁のデータをもとに予報を行うのは、パートナーである日本気象協会の仕事。

 日本気象協会が予測しているため、公共性が高いtenki.jpは、「天気予報のど真ん中」とも言える存在。ただし、そのまま発信しても普通の天気予報なので、どのような伝え方をするとより多くの人に見えてもらえるのか、一工夫を加えるのが池田さんたちの仕事だ。

 ヤフー天気をやっていたとき池田さんの直属の上司は、現東京都副知事の宮坂学さんだという。「ヤフー時代に学ばせてもらった、UI(ユーザーインターフェイス=視覚)、UX(ユーザーエクスペリエンス=体験)のノウハウを取り入れていいます。奇抜なデザインなどに走るのではなく、多くの人に分かっていただけるようにすることにポイントを置いています。また、答えが一つではない。ボタンは青か白かなど、ABテストを日々回している状態です」。

 そもそも、天気予報は資格を持っていれば誰でもできるというわけではなく、許認可制の事業となっていて、日本には約80の事業者が存在する。中には、雷を専門とする事業者もいるという。流れとしては、気象庁が収集した観測データや予測データに、各事業者が独自のアレンジを加え情報発信をしていく。 メディアで発信される天気予報もこうした事業者から情報を購入しているのだ。事業者によって予測が少し異なるのは、このためだ。

 「tenki.jp」 のオリジナルな情報発信としては「登山天気」がある。各山の天候をピンポイントで予測するというもの。山のふもとから山頂までのルート沿いのピンポイント予報など、気象業務法の観点から不特定多数の方に公開することが出来ない情報も含まれているため、特定の利用者しか閲覧できない有料アプリになっている。山の天気は変わりやすため、情報を受け取る側にもリテラシーが必要となるため不特定多数には発信できないそうだ。

 これ以外にも天気にひもづく「指数」を発表している。「鍋指数」「蚊ケア指数」「シミ指数」などだ。「蚊ケア指数ではアース製薬さん、シミ指数では資生堂さんなど広告クライアントと連携することも行っています」。

 池田さんは、26歳の時大病を患い、2年間ねたきりという生活を経験したと。この2年間でリハビリをかねて、気象予報士を目指す人たちのサイトを立ち上げ、この経験や感じたことが、現在のビジネスの原点になっているという。そんな経験もあって、「せっかく気象予報士の資格をとったにもかかわらず、8割くらいの人が活用できてきないという実態があります。全国に散らばる有資格者をネットワーク化することで災害時の情報発信など、新しい仕組みを作ることができないか考えています」。

 今後は、「天気×〇〇」という形で、天気との組み合わせによる情報の発信強化を進めていくという。確かに天気は全ての人の生活にかかわるだけあって、その組み合わせも無数にある。つまり、それだけビジネスチャンスの可能性があるということだ。

 インタビューにはパートナーである、日本気象協会の岡村智明さんも同席してくれた。せっかくなので、一つ質問させてもらった。『バックトゥザフューチャー2』で、タイムマシンを開発した「ドク」こと、エメット・ブラウン博士が「5秒後に雨が止む」という天気予報を入手しているシーンがある。子ども心に未来の天気予報はそんな性格なのか? と驚いたものだ。しかし、映画の中で描かれている世界は2015年、未だに空飛ぶ自動車も実現していないのだが……。

 「高性能レーダーの開発も進んでいますので、現在では、分単位で予測することが可能になっています」

 天気予報の進化に今後も大いに期待したい。

  
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