2022年11月29日(火)

経済の常識 VS 政策の非常識

2021年2月12日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

暴走を止める資本主義

 ただし、トランプ氏が仕事を維持するメカニズムもある。トランプ陣営が訴訟のために設立した寄付を集める基金は、政治活動のためにも使うことができるという。その額は200億円近い(毎日新聞20年12月3日)。トランプ氏は、いつでも200億円を選挙キャンペーンのために使うことができる。共和党上下院議員の予備選挙で、反ないし非トランプ的な候補者がいたら、いつでも親トランプ的な候補者を立てることができる。そもそも、共和党支持者の間で、次期24年大統領選で共和党候補としてトランプ氏が53%の支持を集めている。長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏も8%の支持を集めている(読売新聞20年11月25日)。

 トランプ氏は、長期にわたって共和党内に影響力を保つことができる。トランプ支持でかなりの仕事は維持できる訳だ。つまりは、ここにビジネスがある。負け戦の訴訟を指揮するトランプ陣営顧問弁護士・元ニューヨーク市長のジュリアーニ氏は1日200万円の費用をトランプ陣営に請求しているという(米紙ニューヨーク・タイムズ20年11月17日)。腕利きの弁護士の相場でも1日150万円だそうだから、トランプ氏に忠誠を誓う価値はある。

 米国の20年国内総生産(GDP)は約21兆㌦、雇用が約1.6億人である。米国の公共部門の給与は高くないし、汚職もできない。大統領の給与が40万㌦だから後は推して知るべしだ。一般の人には高額の給与だが、腕利きの弁護士や最高経営責任者(CEO)には魅力的な仕事ではない。なりたがるのは名誉とイデオロギーと退官後の政府とのコネを使ったビジネスの利益を考えてだろうが、評判の悪い大統領の政権とのコネでは逆効果になりかねない。

 米国の資本主義、市場主義の繁栄が、チェックアンドバランスを考えた憲法体制と、それを支える伝統とともに米国民主主義を守っている。新型コロナウイルスの対応で中国の全体主義が注目を浴びているが、全体主義は気に入らないと思えば誰でも解雇できる。これでは経済的にも中国共産党一党独裁に抵抗することができない。

 選挙結果に反するクーデターという横暴がまかり通らないためにも、公平な選挙を担保することはもちろん、誰もが自由に仕事を作れる資本主義を守ることが必要だ。資本主義体制では、独裁者が働いている人を自由にクビにできないし、独裁者の子分にならなくても良い仕事を見つけることができる。民主主義と資本主義はセットで機能するものだ。

Wedge2月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■資本主義の転機 日本と世界は変えられる
Part 1       従業員と家族、地域を守れ 公益資本主義で会社法を再建
Part 2       従業員、役員、再投資を優先 新しい会計でヒトを動機付ける       
Part 3       100年かかって、時代が〝論語と算盤〟に追いついてきた! 
Part 4     「資本主義の危機」を見抜いた宇沢弘文の慧眼
Part 5       現場力を取り戻し日本型銀行モデルを世界に示せ    
Part 6/1    三谷産業  儲かるビジネスではなく良いビジネスは何かを追求する    
Part 6/2    ダイニチ工業  離職率1.1% 安定雇用で地域経済を支える   
Part 6/3    井上百貨店  目指すは地元企業との〝共存共栄〟「商品開発」に込める想い       
Part 6/4    山口フィナンシャルグループ  これぞ地銀の〝真骨頂〟地域課題を掘り起こす
Part 7       日本企業復活への処方箋 今こそ「日本型経営」の根幹を問え

  
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◆Wedge2021年2月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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