ベトナムと交渉するには今がチャンス
ベトナム政府が送り出し業者に対し、実習生からの手数料徴収を認めていること自体、実習制度のルール違反なのである。その点に関し、なぜ日本政府は問題にしないのか。
ベトナムには、特権階級の「利権」という事情があるのだろう。だとすれば、最低でもベトナム政府が定める手数料の上限「3600ドル」は守られるように、日本側は強く要求すべきである。
ルールが守られないのであれば、ベトナムからの実習生の受け入れを一切停止する。ちょうど現在、緊急事態宣言によって実習生の入国は止まっている。だが、同宣言が解除されれば、入国もまた再開する。現状を改めるため、ベトナムと交渉するには今がチャンスだ。
「悪質業者」を取り締まったところで実効性はない。経営者の多くは、複数の業者を運営している。また業者間の横のつながりも密接なので、抜け道はいくらでもある。
仮にベトナムからの実習生送り出しが止まれば、人手不足の企業には一時的に混乱が生じるかもしれない。とはいえ、実習生が借金漬けで来日する現状を改めなければ、失踪や犯罪といった問題は今後も増えていく可能性が高い。
実習制度の趣旨に沿い、金銭的な負担なく日本で働けるならば、良質な人材の来日も期待できる。また、ベトナムと日本の長期的な関係にも、必ずや良い影響があるに違いない。
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