経済の常識 VS 政策の非常識

2021年3月4日

»著者プロフィール
閉じる

原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 新型コロナウイルスワクチン接種は、これまでにない大規模なプロジェクトだとされているが、実は日本では、同じ規模の接種をインフルエンザワクチンで毎年行っている。なぜ、コロナだけ大騒ぎになるのだろうか。

(代表撮影/ロイター/アフロ)

 2月17日、日本でもやっと医療関係者へのファイザー製の新型コロナウイルス・ワクチンの接種が始まった。4月12日からは高齢者への接種を始めるとしている。

 日本政府は、米ファイザー社から2021年内に1億4400万回分(7200万人分)の供給を受けることになっている。その後、英アストラゼネカ社から、3月までに3000万回分、その後9000万回分(ワクチンは申請済みだが未承認)、米モデルナ社から6月までに4000万回分、9月までに1000万回分(週内に承認申請)の供給を受けることになっている(日本経済新聞2021年3月1日)。

 人口の70%が接種して抗体を持てば集団免疫を獲得して、コロナ感染症はそれ以上拡大しないとされている。日本の人口1億2700万人の70%は8890万、2回接種しないといけないので、その2倍の1億7780万回分のワクチンを接種すれば、経済も暮らしも正常に戻ることが期待できる。外食旅行業界を中心として低迷を余儀なくされていた経済はこれで正常へと向かうかもしれない。ただ、ワクチンの供給量は2021年中には十分だが、これだけ大量のワクチンを迅速に接種できるかが大問題となっている。

ワクチン接種はこれまでと同様にできるのではないか

 どのようなスケジュールで供給されるのか分からないので、4月から毎月同じだけ供給されると考えておくしかない。すると、必要量の1億7780÷9カ月で月に1975万回の接種が必要になる。これがどのくらい大変かと考えるためには、毎年しているインフルエンザワクチンのことを考えるのが良い。

 実は、インフルエンザは毎年3000万本以上のワクチンが供給され、成人量に換算すると6000万回である。6か月以上13歳未満の子どもは2回接種することとなっているので何人分かと考えると面倒だが、接種の手間を考えるには成人量換算で構わない。2020/21年シーズンでは3178万本のワクチン、成人量換算でその2倍の6356万回分が供給されたようである(厚生労働省 平成30年4月11日第1回 医薬品医療機器制度部会「改正法の施行後5年を目途とした検討」「資料2 2020/21シーズンのインフルエンザワクチンの供給について」)。

 インフルエンザワクチンは10月に供給され12月までに接種される。すると、月に2119万回分のワクチンが毎年接種されていることになる。つまり、月に2000万回の接種は毎年していることなのだ。日本には8324の病院と10万2396の診療所合わせて11万720の医療施設がある(厚生労働省「医療施設動態調査(令和元年 5 月末概数)」)。月2000万回を11万施設で割ると、施設あたり月181回の接種をすれば良いことになる。月20日稼働でも1日9回接種すればよい。

関連記事

新着記事

»もっと見る