世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年4月2日

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 バイデン政権が発足して、3月20日でちょうど2か月が経った。政権発足後から、バイデン政権は、綿密にインド太平洋構想を検討し、強い対中政策を決定し、外交の行動計画を戦略的に作ってきたようだ。3月からは本格的にその執行に乗り出している。

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 3月3日には、大統領府より国家安全保障戦略暫定指針を発表し、民主主義の重要性を強調し、中国を「唯一の競争者」と規定した。バイデン大統領は、同文書に基づいて省庁が動くことを指示した。同日、ブリンケン国務長官は、中国を「21世紀最大の地政学的試練」と位置付けた。

 3月12日からの1週間は、米国のインド太平洋外交が、活発に動いた。まず3月12日、オンラインではあったが、初の日米豪印(クワッド)の首脳会談が開催された。4首脳は、年内には対面で、クワッド・サミットを開催することを約束した。4首脳は、ワシントン・ポスト紙の3月13日付の紙面に、「我々は自由なインド太平洋地域にコミットする」との連名記事を掲載した(参照:3月30日記事『日米豪印クワッドが国際社会に示した意義』)。

 3月16日、ブリンケン国務長官及びオースティン国防長官が日本を訪問し、日米「2+2」が開催された。両長官は、訪日を前に、3月15日付のワシントン・ポスト紙のオピニオン欄に、米国がいかに同盟諸国を重要視して外交を展開するか、初の外交訪問先の日本及び韓国で、北朝鮮や中国に対する協議をすることを述べている。日米「2+2」の後、両長官は、茂木外務大臣、岸防衛大臣と共に、日米共同声明を発表した。共同声明では、特に中国海警法の不合理な問題が強調され、世界に問題の所在を知らしめた。この問題は、尖閣諸島問題を抱える日本側の関心が強かったのではないか。台湾海峡問題や南シナ海の問題も直截な言葉で書かれた。ASEAN諸国との連携への言及も重要である。年内に再度「2+2」を開催することも合意された。これは緊密な日米同盟の表れだろう。

 今後、4月上旬には菅総理が訪米する予定である。日本及び地域、世界の平和及び繁栄にとって、日米関係を強固にしていくことが何よりも重要である。さらに、6月には、英国でG7コーンウォール首脳会議が予定されており、バイデン政権が同盟外交を強化していく中で、日本の役割も少なくないだろう。

 日本訪問後、3月18日、ブリンケン国務長菅とオースティン国防長官は、韓国を訪問し、米韓「2+2」を開催し、共同声明を発表し、在韓米軍経費負担特別協定(SMA)に仮署名した。北朝鮮の核開発については、共同声明の文言は微温的である。「核とミサイルの問題」が米韓同盟の優先課題とは言うが、「非核化」という言葉は何処にも見えない。他方、米韓外相会談の発表では、非核化とはあるが、「朝鮮半島の完全非核化と恒久平和」と曖昧に書かれている。なお、ブリンケン長官は、別途、米政府は目下北朝鮮政策を検討中であり、「数週間の内」には完了するだろうと述べている。なお、米韓共同声明は「域内の安全保障環境に対する漸増する挑戦を背景に、米韓同盟が共有する価値は規範に基づく国際秩序を損ない、不安定化するあらゆる行為に反対するという両国の公約を支えている」と述べるが、中国の名指しは避けている。

 韓国の後、ブリンケン国務長官は、アンカレッジでサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)らと合流し、米中外交トップ会談に臨んだ。3月18日~19日に、米中外交トップ会談は、合計8時間にわたって行われた。3月17 日には、米国は香港自治法に基づく報告書を発表し、全人代常任委員会副委員長など 24名の関係者への制裁を発表した。3月18日、ブリンケン国務長官は、冒頭、新疆ウイグル自治区や香港に言及した後、米国へのサイバー攻撃、台湾への威圧的態度等、中国の挑戦を非難した。それに対して、楊潔チ共産党政治局員は、内政に干渉しないように言いながら、逆に、米国国内の人権問題を提起した。冒頭2分ずつの発言が、楊政治局員の発言が15分にも及んだことから、さらなる米国側の発言等、1時間に及んだ「冒頭」発言となった。その後、非公開で約7時間にわたった米中会談では、様々な議題が話し合われたようで、イラン、北朝鮮、気候変動問題等では、一定の意見の一致もあったようである。が、ブリンケン長官が、会談後に述べているように、貿易、技術等、両国間の問題は、議会、同盟国等と協議しながら、今後も進めて行くことになる。

 韓国の後、オースティン国防長官はニューデリーを訪問し、インドのシン国防大臣と会談した。両者は、米印間の軍事協力を強化することで一致し、自由で開かれたインド太平洋構想を日米豪印の4か国(クワッド)で推進することを確認した。3月12日のクワッド首脳会談を、米印の国防トップが、軍事面で追随した形だ。オースティンが国防長官に就任した際、アジアでの経験が少ないことを危惧するものもあったが、今回、日本、韓国、インドと最初に訪問し、バイデン政権のアジア太平洋外交を重視する姿勢が見えた。

  
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