2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年3月30日

 日米豪印4カ国(クワッド)の首脳、菅義偉総理、ジョー・バイデン米大統領、スコット・モリソン豪首相、ナレンダラ・モディ印首相は、3月12日に初の四カ国首脳会議をオンライン形式で開催した。翌日3月13日付のワシントン・ポスト紙には、4首脳が連名で投稿し、インド太平洋地域の自由と繁栄を連携して守ると国際社会に宣言した。

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 バイデン大統領は政権発足直後から、外交に積極的に取り組んでいる。バイデン・ドクトリンとでも呼ぶべき 1)米国主導での国際社会への関与、2)民主主義など政治価値の推進、3)新型コロナウイルス、気候変動など国際的課題への取り組み、4)同盟国との連携及び国際機関への関与、5)政策専門家の重用などの、外交指針も明示した。
政権発足前には、米国民の新型コロナウイルス感染への対応、米経済活動の再開と雇用の創出、国民の分断と対立の解消など国内政策に集中すると思われたが、予想以上に外交に注力している。トランプ前大統領の4年間で混乱し脆弱化した、リベラルな国際秩序を重視する国々には好感すべき滑り出しだ。

 シントン・ポスト紙に寄せられた論説では、日米豪印の首脳が連名でインド太平洋地域にクワッドとして取り組む宣言を行った。クワッドによる 1)民主主義的価値を基盤とした協働、2)新型コロナウイルスと気候変動への取り組み、3)インド太平洋地域の平和と繁栄の促進、4)東南アジア諸国、太平洋島嶼国、インド洋地域との連携が柱である。

 米国がクワッドを主導して、これまで概念的だった「自由で開かれたインド太平洋構想」に、具体的に四カ国が共有する行動指針を国際社会に示した意義は大きい。さらに、年内にはオンライン形式ではなく、実際に首脳が集ってクワッド首脳会合を目指すとしており、喫緊の課題に迅速に対応するという決意も伝わってくる。

 ワシントン・ポスト紙の論説は、スマトラ沖地震、新型コロナウイルス感染、気候変動など、インド太平洋全域に共通の危機への対応をクワッドの出発点、そして存在意義として打ち出している。共通の危機に対する含意の背景には中国の国内外における行動への強い警戒感があるが、中国を名指しすることはせず、中国も協力しやすい人道援助や災害救済を柱として書いている。中国と米国のどちらかを選択することを回避したい地域諸国、中でも東南アジア諸国への配慮が示されているのだろう。バイデン政権ではキャンベル・インド太平洋調整官が論説の作成に関与していると言われるが、北東アジア政策に加えて東南アジア政策も意識してきた人物であり、クワッドの鍵を握る存在なのだろう。

 ただ、政策の構築と遂行は全く別である。クワッドはインド太平洋全域の平和と繁栄のために協働することを宣言したが、「悪魔は細部に宿る」の通りで、新型コロナウイルスのワクチンで成果を出せるか、中国に対して東南アジア諸国も抱き込みながら対応できるかが、四カ国首脳に問われている。日本には、菅首相の4月の訪米でバイデン大統領と共に「インド太平洋構想」の強いメッセージを打ち出すことが期待されている。日米同盟を基軸に、この地域に具体的にどのような貢献ができるのか、域内諸国も注視する日米首脳会談となろう。

  
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