再エネ導入は給料にも影響を与えた
再エネ導入を支えたFITでは、再エネにより発電された電気を高価格で買い取るため電気料金を通し賦課金額の負担が行われた。再エネ設備量の増加に合わせ負担額も上昇し、2021年度は1kWh当たり3.36円になっている(図-7)。家庭用電気料金単価の1割以上、標準的な家庭の負担額は、年間1万円を超えている。だが、問題は家庭よりも産業だ。
製造業の支払う従業員1人当たりの電気料金は平均年間約76万円だが、その内15%程度が賦課金額の負担なので、1人当たり約11万円になる。エネルギー多消費型産業、例えば、鉄鋼あるいは化学業界では、1人当たり負担額はそれぞれ56万円、24万円にもなる(表)。
負担が重いのは、製造業だけではない。流通大手イオンは、4月末にパートを含めた従業員45万人に1人当たり2万円の一時金を支払うと発表した。同社の連結ベースの水道光熱費は約1500億円だ。賦課金額の負担は1人当たり3万から4万円と推測される。仮にFIT制度がなければ、従業員への一時金も増えていたかもしれない。
今後再エネ導入量に伴い賦課金額は増加することになるが、そうではないと主張する政治家もいる。小泉純一郎元首相は、最近の対談で「再エネだと電気料金が高くなる」との問いかけに対し「嘘だ。太陽光、風力ただですよ」と述べ、さらに「施設費がかかる」との問いには「施設費といっても原発施設と比べればゼロも同然だ。太陽光も風力も格段に安くなっている」と主張している(「サンデー毎日」5月23日号)。
発言が本当であれば、FITは不要な筈だが、そうはなっていない。今年度の浮体式洋上風力発電からの買取価格は1kWh当たり36円プラス税。火力発電コストの3倍以上だ。格段に安くなっている? 数字を検証してみよう。