2022年7月2日(土)

Wedge REPORT

2021年5月20日

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  また、行政指導の中で総務省は「外国の法的環境による影響等にも留意しつつ情報の取り扱いに係るリスク評価を実施し、必要に応じ所要の措置を講ずること」とした。これは何を意味するのか。小向教授は「現地政府による強制力のあるデータ収集はどこの国でもありうる。せめてその履歴が残る透明性(トランスペアレンシー)を備えた国に預けるなど、できることをよく『考えろ』という意味だろう」と語る。まるで総務省は責任を企業に押しつけているようにも見える。

 LINEの親会社であるZホールディングス(以下、ZHD)の川邊健太郎社長は4月の決算発表の会見で「(データ処理を委託するのは)保護法制レベルが日本と同等の地域、例えばアジア太平洋経済協力(APEC)の越境データ移転ルール『CBPR』の基準に基づく認証を受けた企業に限ったほうがいいのではないかと議論している。CBPRには日米韓など9カ国が入り、中国は入っていない」と語った。この「中国は入っていない」という回答は、一連の騒動を象徴している。

 今後、日本のデータガバナンスをどうしていくべきか。ZHDが開催するLINE問題に関する特別委員会で座長を務める宍戸常寿・東京大学大学院教授は「どのような情報を、どういった法規制や司法手続きの信頼性を備えた国になら出していいのかについて、国民的議論が必要だ」と指摘する。

 デジタル社会において情報を守るためには、政府が企業やユーザーに対して一方的に法律を作り、企業はそれを守り、ユーザーはサービスを享受するという縦の関係では守り切れない。われわれユーザー自身も、データをどうやって利活用するのかを主体的に考え、企業や政府に対してそのあり方を要望していくことが必要だ。ある大手IT企業のセキュリティ担当役員も「国民感情、企業の電気代等のコスト、安全保障などの観点を踏まえて議論を深めてほしい」と語る。

 今回の問題は、GAFAのようなデータプラットフォーマーを持たない日本の弱みを露呈した。普段は、LINEなどのサービスの利便性を享受しているにもかかわらず、中国や韓国という国名が出ると、騒動が巻き起こり、政府はその都度「対応」する。そうではなく、日本は国際的なデータ流通にどう向き合うかの国民的議論を早急に行わなければ、いつまでもデータ後進国から抜け出すことはできない。

Wedge6月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■押し寄せる中国の脅威  危機は海からやってくる
Introduction  「アジアの地中海」が中国の海洋進出を読み解くカギ
Part 1         台湾は日米と共に民主主義の礎を築く        
Part 2       海警法施行は通過点に過ぎない  中国の真の狙いを見抜け  
Column    「北斗」利用で脅威増す海上民兵
Part 3       台湾統一  中国は本気  だから日本よ、目を覚ませ! 
Part 4     〖座談会〗 最も危険な台湾と尖閣  準備なき危機管理では戦えない
Part 5       インド太平洋重視の欧州  日本は受け身やめ積極関与を
Part 6       南シナ海で対立するフィリピン  対中・対米観は複雑
Part 7         中国の狙うマラッカ海峡進出  その野心に対抗する術を持て

  
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◆Wedge2021年6月号より

 

 

 

 

 

 

 

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