国際基準に沿う水際対策は必要
米国は5月1日、欧州諸国や中国、ブラジル、南アフリカなどを対象に実施している入国制限措置にインドも加える決定をバイデン大統領が下した。自国民もしくは米国の市民権を持つ者を除き、入国を実質禁止したのである。台湾も5月4日、過去14日間以内にインドに滞在歴のある外国人の入国を停止している。
政府の対応に批判が相次いだのも当然だろう。すると政府は5月10日、インドなど変異株流行国からの入国者に対し、宿泊施設での待機期間を3日から6日間に延長した。しかし、それでも批判は止まない。そのため14日になって急きょ、インド、パキスタン、ネパールの3カ国に過去14日以内に滞在した外国人は、在留資格があっても入国を拒否することになった。
だが、感染力の高さが指摘されるインド型の変異株は、すでに日本でも市中感染が広まっている可能性が高い。5月初旬に東京医科歯科大学付属病院に入院した40代男性から、外国への渡航歴がないにも関わらずインド株が確認されてもいるのだ。
年明けまでの入国制限緩和措置は、新型コロナ「第3波」につながった。そして以降も続いた水際対策の甘さが「第4波」をもたらし、3度目の緊急事態宣言発令となったことは明白だ。
筆者は何も、外国人の入国を完全に止めろと言いたいわけではない。しかし入国を認めるのではあれば、少なくとも国際基準に沿う水際対策は必要だ。ベトナムという「成功モデル」と比較しても、日本の水際対策は実効性に乏しく、しかも後手を踏み続けている。いくら緊急自体宣言で国内の「人流」を制限しようと、肝心の水際がこうでは感染拡大が止まるはずもない。
コロナ感染が抑え込めなければ、そのぶん経済への悪影響は長引く。そのことは、最大の外国人労働者供給源となっているベトナムとの関係においても言える。緊急事態宣言下では、日本が欲する出稼ぎ労働者も受け入れらない。とりわけ農業や建設業などでは打撃は深刻だ。
そして影響は、新規の入国が止まるだけに留まらない。コロナ禍の日本に愛想を尽かし、日本から離れていく外国人も増えているのだ。
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