2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2021年6月29日

イラクでも協力者は戦々恐々

 アフガニスタンと並んで同じ運命が待ち受けているのがイラクの駐留米軍への協力者たちだ。ワシントン・ポストによると、イラクで特別査証を待つ協力者は10万人に上るという。米軍は2011年、イラク戦争の鎮静化でいったんは完全撤退したが、イスラム国(IS)掃討作戦の開始で14年に再び派遣された。

 米駐留軍の規模は現在、約2500人。米国とイラクは4月、ISの脅威が減退したことから米部隊を最終的に撤収させることで合意した。イラク人協力者の人数が多いのはイラク戦争当時からの人たちも含まれているためだが、アフガン人協力者の扱いが急務として優先され、イラク人協力者の査証発給手続きは休止状態のようだ。

 しかし昨年、イラン革命防衛隊の精鋭部隊司令官ソレイマニ将軍とイラクの武装組織カタイブ・ヒズボラ(神の党旅団)の指導者が米軍のドローン攻撃で一緒に暗殺されて以来、米軍協力者に対する親イラン系武装組織の追及が激しくなり、殺害の脅迫を受けた協力者も多いという。

 こうした中イラクでは、2月以降、駐留米軍などに対するドローン攻撃が相次ぎ、6月初めにも米軍が駐留する西部アンバル州のアサド空軍基地上空で2機のドローンが撃墜される事件が起きていた。これに対し、米軍は28日未明、イラクとシリア国境地帯にあるカタイブ・ヒズボラの武器庫など3カ所を報復爆撃した。バイデン政権下での同組織に対する攻撃は2度目だ。

 今回の米軍の攻撃による被害は不明。バイデン政権は攻撃が「米国民を守るというバイデン大統領の明確なメッセージ」としているが、駐留米軍に対するドローン攻撃が抑止されるかは予断を許さない。米国と武装組織の緊張が高まれば、米軍協力者探しも激しさを増すのは必至。それでなくても死の恐怖に脅えるイラク人協力者たちにとっては心が休まる時はないだろう。

  
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