6月16日、バイデン大統領とプーチン大統領の初の対面による首脳会談がスイスのジュネーヴで行われた。
この米露首脳会談を前に、6月15日付のニューヨーク・タイムズ紙では、同紙のデイヴィッド・サンガー国家安全保障担当特派員が、いま米ロ首脳の関心は核兵器ではなく、サイバー兵器である、と述べている。
6月16日の米ロ首脳会談では、共同声明で、核戦争が回避される必要性が強調され、近く、軍縮及びサイバーに関する両国間の協議が開始されることが合意された。サンガーによると、米ロ両国の首脳の関心は核兵器ではなく、サイバー兵器に向かっているということだが、サイバー兵器への関心は、何も米ロの首脳に限らない。
サイバー兵器は核兵器と比べていくつかの特徴がある。まず、核兵器が「使えない兵器」(または使いにくい兵器)であるのに対し、サイバー兵器は「使える兵器」(または使いやすい兵器)で、事実使われている。サイバー兵器はあらゆる種類があり、規模の小さなものは、より使われやすい。これは破壊力が核兵器に比べて圧倒的でないことと関連している。
第2の特徴は、使う当事者が国家に限らないことである。核兵器もテロリストの手に渡る可能性はゼロではないが、極めて厳重に管理されていて、その可能性は少ない。これに対しサイバー兵器は、種類が多いことも関連して、国家以外に犯罪グループ、テロ組織などの手に渡る可能性が大きい。
第3の特徴は、上記1と2にも関連するが、抑止が効かないことである。核兵器の場合はいわゆる相互確証破壊で、使うことは自滅につながるが、サイバー兵器は使える兵器で、使う主体が国の他に、犯罪グループ、テロ組織などがあり、抑止になじまない。
もちろん、米ロ首脳会談では、国家が使うサイバー兵器が問題とされている。特に問題はロシアである。ロシアはオバマ政権時、ホワイトハウス、国務省、統合参謀本部の電子メールにサイバー攻撃をかけたほか、2016年の大統領選挙にサイバー攻撃で介入した。最近では、米政府機関、フォーチュン500の企業やシンクタンクに大規模なサイバー攻撃を仕掛けている。
バイデン大統領は「釣り合った反応をする」と述べ、経済制裁を強化したが、プーチンは一貫してサイバー攻撃を否定しており、経済制裁はプーチンにサイバー攻撃を止めさせる効果を上げてはいないようである。
バイデンは、6月16日のジュネーヴでのプーチンとの会談で、サイバー攻撃の問題を取り上げ、重要インフラ等への攻撃は、決して許されないと述べたとそうだ。それに対して、プーチンは、ロシアのサイバー攻撃を、従来通り否定したようである。米ロ間のサイバー攻撃に関する協議が開始されたとしても、この問題は、軍縮以上に難しい、米ロ両国間に立ちはだかる問題であり続けるだろう。
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