起業という新たな転機を迎えて
独立し、㈱ユニバーサルスタイルを設立したキッカケは、30歳という年齢と東日本大震災だった。それまではマネージャーとして障害を持つ社員と関わるのは多くても30~40名。そのマネジメント自体は充実したものだったが、30歳を迎えるにあたり、もっと多くの障害者のサポートをすることができないだろうかと感じるようになっていた。それも社会的に広い意味を持ったサポートができないだろうかと。
そしてもう一つの理由は2011年3月の東日本大震災だった。
お亡くなりになった方の中には、目標に向かって準備していたり、いつかは叶えたいという夢を持っていたりした人が多数いたはずだ。しかし、一瞬にして、その夢も希望も奪われてしまった。それは決して他人事ではない。それを考えたときに、「だからこそ今やらなきゃ」と考えるようになった。
「目が悪くなって積極的になれたなんて皮肉な話なんですけどね。健常者の時にこんなに積極的だったらよかったのに、とは思いますよ。目が悪くならなければ独立するなんて考えてもいなかったでしょう。もし目が良いままだったら、パラリンピックに出ることもないし、人のために仕事をしようとも思っていなかったかもしれません」
障害者と企業を「繋ぐ」存在に
平成25年4月から民間企業の障害者雇用率が現行の1.8%から2.0%引き上げられる。
「企業サイドにしてみれば、障害者を雇用したいと思っても、どうやって雇えばいいかわからないし、どういった仕事を用意すればいいのかわからないという声を聞くんです」
初瀬は障害者の雇用を促進する法律があっても、障害者と企業を繋ぐ「間」、役割がすっぽりと抜け落ちていることが問題だと指摘する。
身体に障害がある人や、知的、精神に障害がある人たちに対して、どのような配慮をしたり、どのような仕事を用意したりすればいいのか、またはどのような人が自社に合うのかなど、企業側にほとんどその情報がない。
ここを埋めることによって障害者の就労を高めることができると考えている。
「障害者には出来ることと出来ないことがあります。しかし、しっかりとした人生設計が出来るような配慮を、他の社員と同じように考える必要があるんです。企業は雇用率を高めると同時に、時間的なことや作業的なことに配慮し、障害者も仕事の質や量を高めて、互いが歩み寄る姿勢がなければ、これ以上雇用率をあげることは難しくなるでしょうし、障害者が生き生きと働けるようにはならないでしょう」