幸いにして初瀬の場合はサンクステンプで障害者の就労に携わってきた経験があるため、障害者の理解が高い。また何よりも強みなのは、自らが視覚障害者だということだ。
初瀬のように自身が障害者でありながら、障害者の就労にダイレクトに繋がるような仕事をしている会社経営者はいないのではないだろうか。
「実際によくあるケースですが、採用数一人の枠に30~40人が応募します。そこで企業は面接を繰り返して選んでいくんです。これでは人事部の人件費の増加に繋がってしまいます。そこに紹介業の会社が入れば、あらかじめ人材を絞って提案することができますので、人事部の人件費の削減にも繋がるんです。
たとえば、車いすの方であれば受け入れが可能なので、車いすの方に絞って探してもらえませんか、という依頼の仕方になるのです。知的、身体、精神と障害には様々ありますが、苦手を一つひとつ潰してあげること、そして強みを伸ばしてあげることが大切です。僕はコンサルタントとして、ニーズを掘り起こして、仕事を創るところからお付き合いしたいと思っています」
「苦手を潰し、強みを伸ばす」というところに少し説明を加えておきたい。
視覚障害の方がいい人だから雇おう、聴覚障害の方も良さそうだから雇おう。また、車いすの方も……と雇ってしまったら、どこに配慮するべきなのかわからなくなってしまう。もちろん人柄は大事な要素ではあるが、同じような障害を持っている方を雇用した方が企業側としては効率がいい。障害者の苦手なところに配慮しやすくなるからである。異なる障害を持つ方たちを雇用し実際に内部が混乱しているケースもあるようだ。
「障害者雇用と一括りにまとめてしまうと善意が善意でなくなってしまうんです。基本的には人格と能力で採用すべきではあるんですが、そこにも配慮が必要だということです。その方に合った仕事と階段を用意してあげないといけません。伸び代をきちんと見て成長させてあげられる企業が伸びていきますよ。従業員満足度があがれば、顧客満足度もあがっていきます。BtoCの企業であれば、それがファン層の拡大にも繋がるはずです」
そう語る初瀬は、武道家というよりも銀座にオフィスを構えるビジネスマンらしい匂いを放っている。