日本のメディアでも大きく報道されているが、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)の解職請求(リコール)投票が9月14日に行われる。民主党が圧倒的に強い同州でリコールが成立する可能性は低いように思われ、最新の世論調査では反対が賛成を十数パーセント上回っている。しかし、共和党支持者との比較では民主党支持者は投票に行かないとの見方もあり、さらに賛成票が多いとされる郵便投票がコロナ禍で認められたことからリコール成立の可能性もあるとも報じられている。
2003年にも当時のグレイ・デービス・カリフォルニア州知事(民主党)に対するリコール投票が行われ、成立している。その時に大きな争点になったのは、州の電力市場自由化政策の結果生じた電力供給不足が引き起こした輪番停電だった。要は、州のエネルギー・電力政策が問われたのだ。
今回のリコールの背景には州知事のコロナ対策と環境・エネルギー政策に不満を持った州共和党支持者の存在があるが、いま最大の争点は、米国で最も進んでいるとされる同州の気候変動、エネルギー政策だ。
昨年8月同州は電力供給力不足による停電を経験した。リコールが成立した場合の後釜を狙う共和党候補者は、停電の原因は太陽光と風力発電設備導入を進めた民主党州知事の間違った環境・エネルギー政策にあると、軒並み批判している。
知事へのリコールは米国史上4回目
カリフォルニア州は、日本より少し広い面積に人口約4000万人を抱え、全米最大の州内総生産額、3.2兆ドルを持つ州だ。民主党が強い州として知られ、20年の大統領選挙の得票率は、バイデン現大統領が63.5%、トランプ前大統領が34.3%だった。
70年代、80年代には、共和党の得票率が民主党を上回っていたが、90年代からの8回の大統領選挙では常に民主党の得票が共和党を上回っている。2018年の州知事選でもニューサム知事が61.9%の票を得て、共和党のジョン・コックス候補に勝利している。
民主党が強い同州において170万人の署名によりリコール投票が実施されることになったが、米国では19州においてのみ知事に対するリコールを行うことが可能だ。米国史上知事に対するリコールは今回で4度目になる。
初めてリコール投票が行われたのは、1921年ノース・ダコタ州知事に対してであり、解職された。2003年解職されたデービス知事の後任に共和党のアーノルド・シュワルツェネッガーが就任したことは広く知られている。12年ウィスコンシン州知事に対するリコールは反対票が多く、職に留まることになった。
カリフォルニア州では、有権者は、解職に賛成か反対かをまず選択し、知事が解職された場合の後任に誰を選出するかを投票することになる。今回のリコールには、共和党を中心に46人が立候補しているが、解職反対の民主党からは、有力候補の立候補はない。