2024年7月16日(火)

World Energy Watch

2021年9月14日

 いま、後任として最も票を集めるとみられているのは、ラジオ番組のホストとして著名なラリー・エルダーであり、次いで前サンディエゴ市長のケビン・フォルコナー、前回知事選でニューサム知事と争ったジョン・コックスと見られている。

 共和党の有力候補者は、ニューサム知事の気候変動・エネルギー政策が停電を引き起こしたと非難している。カリフォルニア州での2度のリコールの原因は、ともに電力供給。停電の問題にあった。

失敗した電力自由化政策

 カリフォルニア州は1998年に電力市場の自由化を開始した。発電事業者を増やし、電力供給を競わせることによる電気料金の引き下げを狙ったものだったが、小売り電気料金上昇の可能性もあった。州政府は小売りを担っていた州内の大手3電力会社には、競争環境を作るため火力発電設備売却を要求する一方、条件付きで小売料金の凍結を求めた。

 発電設備を購入した当時全米第7位の企業であったエンロンなど11社が発電事業者として参入したが、2000年夏ごろから供給量が減少し卸電気料金が上昇するようになった。冬場になっても需給の逼迫は改善されず01年1月には大規模な輪番停電が始まることになった。小売り料金が締結されていた大手電力3社のうち1社は破綻し、1社は寸前まで追い詰められ、結局州政府が卸電気料金購入費用を負担することになった。その費用は日本円換算で1兆円を超えていたとされている。

 需給が逼迫した原因は、発電所の故障などとされていたが、不正経理により01年末に破綻したエンロン社内から大量の録音テープが見つかり、卸価格を引き上げるため意図的に供給を停止していたことが明るみにでることになった。

 州政府が導入した市場自由化の設計に問題があったとされ、州政府は自由化を中断し、その後、部分自由化は行ったものの、規制を行っている。温暖化対策に熱心な州政府の意向を反映し、州公共事業委員会は電力会社に対し、再エネ導入と二酸化炭素排出源である火力発電所閉鎖を求めていたところ、20年8月に停電を招くことになった。

電力供給不足により停電

 カリフォルニア州は気候変動対策に熱心な州だ。18年ブラウン前知事(民主党)が温室効果ガスの実質排出量ゼロを45年に州内で達成する目標を定め、ニューサム知事は、35年への前倒し達成の検討を指示している。さらに、35年に内燃機関自動車の販売中止の州知事令を出している。

 州政府の気候変動問題への取り組みを受け、太陽光、風力発電設備を中心に州では再エネ導入が進む一方、州委員会は電力会社に対し二酸化炭素を排出する天然ガス火力発電所も閉鎖し、再エネが発電できない際の電源として蓄電池を利用することを求めていた。

 結果州内の電源別発電量では、図-1のように太陽光発電を中心に再エネが拡大したが、20年8月熱波が来襲した際に停電が発生してしまった。日没後も気温が下がらず冷房需要は大きいままだったが、太陽光発電の発電量が日没とともになくなり、供給量が不足してしまったのだ。熱波が西部の大半の州に広がっていたため当てにしていた他州からの供給も少なかった(図-2)。

 停電直後から、供給が不安定な再エネに重点を置き、天然ガス火力の閉鎖を進めた州政府の政策に問題があるとの指摘があった。州政府は閉鎖予定であった天然ガス火力の稼働を電力会社に求めるなど供給力確保を進めたが、今年の夏も供給力不足の不安があり、最大350万kWの設備が不足する可能性があるとされていた。もし、今年の夏も停電したならば、リコールが成立する可能性が高いと言われていたことから、ニューサム知事は停電回避のためあらゆる手段を取ることになった。


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