2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月15日

 今年は日本がTPPの議長国の年にあたっており、日本としてアジア太平洋における台湾の占める位置を考えた際、台湾のTPP加盟を支持・歓迎するのは当然であろう。日本が台湾のTPP加盟を実現するよう主導することは日本にとっての「喫緊の課題」である。

中台ともに短期間で結論は出ない

 トランプ政権下でTPPを離脱した米国がTPPに復帰することは、日本を含め、メンバー国の等しく期待するところである。バイデン政権は、中国、台湾の加盟申請については、民主主義の価値を共有する台湾の加盟を支持する、と述べた。他方、中国の加盟については、「非市場的な貿易慣行」を持つ、として、中国が加盟のハードルを簡単に超えられないのではないか、との疑いをもっているようである。

 最近、米国の主導する「クアッド(QUAD)」や「AUKUS」というアジア・太平洋地域の新しい安全保障の枠組みがその活動を開始した。このような環境下で、アジア太平洋全体の経済、安全保障を考えるとき、米国がTPPに出来るだけ早期に復帰することが望まれることはいうまでもない。しかし、バイデン政権としては、これまでのところ、米国のTPPへの復帰については、沈黙を守っている。

 中国の貿易慣行、国営企業に対する優遇措置、知的財産権の処理などを勘案すれば、TPPの高いレベルの条件を満たすことは極めて難しく、中国の加盟申請が簡単に認められることは想定しがたい。今回の中台双方の申請には、多くの難問があり、今後行われるであろう各メンバー国による具体的交渉のことを考えれば、短時間に結論の出るようなものではないかもしれない。

 しかし、TPP加入を長年の課題としてきた蔡英文政権にとっては、中国と対比される形で、基本的価値を守り、ルールや秩序を維持する台湾の役割が世界に再認識される上で、一つの好機到来と考えているかもしれない。

   
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