2024年4月26日(金)

WEDGE REPORT

2021年11月5日

【3回目:潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)】日本では衆院挙の告示であった10月19日、咸鏡南道の新浦沖合から日本海に向けて、潜水艦「8・24英雄艦」が新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。労働新聞はこのSLBMについて、「5年前に初めてSLBMを発射した潜水艦から再び新型SLBMの発射に成功した。多くの進化した誘導技術が導入された」と報じている。

 北朝鮮が初めてSLBMを発射したのは16年8月24日の「北極星」で、今回まで5回にわたり発射している。プラットフォームの「8・24英雄艦」はここから命名されていると推測される。

 防衛省はこの時に発射されたミサイルは2発で、うち1発が最高高度約50㌔メートルを変則軌道で約600㌔メートル飛翔したのち、朝鮮半島東側の日本海に落下したと発表するとともに、「いわゆる敵基地攻撃能力の保有も含め、あらゆる選択肢を検討する」と付け加えた。

 今回発射されたSLBMについては、今年1月の朝鮮労働党第8回大会閲兵式に登場した「北極星5号」であると指摘する意見が出ている。朝鮮中央通信が19年7月、金正恩氏が建造中の新型潜水艦を視察する姿とともに、「朝鮮東海作戦水域で任務を遂行することになり、作戦配備を控えている」と報じていることから、近い将来、北極星5号を搭載した3000㌧級のSSB(戦略ミサイル搭載潜水艦)を実戦配備する計画を有していると推測される。

金正恩氏が誇示した兵器の数々

 9月以降の3回のミサイル発射から、北朝鮮が米露中に伍する戦略ミサイル技術を開発しつつあることがわかる。ではなぜ、わずか1カ月ほどの間に各国の軍事当局が注目するようなミサイル発射を立て続けに行ったのか。その答えを推し量ることができる材料が、「国防発展展示会 自衛2021」で行われた金正恩氏の演説にある。

 自衛2021は10月11日、平壌の3大革命展示館で開幕した。開幕式典には金正恩総書記とともに、崔竜海と趙勇元、金徳訓、朴正天の労働党政治局常務委員が顔を揃えた。

 北朝鮮の最高指導部全員が出席したことと、金正恩氏が記念演説冒頭で「自衛2021は今年の党創建記念日をより意義深く祝い、ひときわ輝かせています」と述べていることから、自衛2021が単なる武器展示会ではなく、党創建76周年に際して周到に準備された国防政策上重要な位置を占める行事であることが理解できる。

 金正恩氏の記念演説の中身を見る前に、自衛2021がどれほど重要な行事であるのかを理解していただくために、公開された主要な兵器を紹介したい。

北朝鮮の思惑を推し量ることができる「国防発展展示会 自衛2021」(労働新聞)

 大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」は20年10月の朝鮮人民軍創建70周年閲兵式で初登場したミサイルで、射程距離は1万3000㌔メートル以上と推定され、米国からヨーロッパ全土を射程に収める。ICBM「火星15」は17年に初発射されたミサイルで、射程は1万㌔メートル以上と推定される。

 HCM「火星8」は上述の極超音速ミサイルだ。中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12」は17年4月の金日成氏生誕105周年記念閲兵式で初登場したミサイルで、射程距離は3700㌔メートルに達すると推定される。

 この他、北朝鮮の制式名は確認できないが、米軍がコード名を付したSRBM「KN−23」「KN−25」などが公開された。これら公開された兵器から、金正恩氏が国内外に「国家核武力完成」宣言から4周年を迎えた態勢を誇示する狙いがあることは確かだ。


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