Wedge REPORT

2021年11月19日

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 小規模な稲作は、農機具メーカーのマーケティングと開発能力の高さから、休日にコメづくりをしながら近くの工場などで働くことができるようになった。同時に稲作作業の請負業も発生し、極めて小規模なコメ生産農家では、機械類を持たずに規模の大きな農家へコメづくりの機械作業を委託するシステムもできあがった。

 移植栽培方式は、その作業用機械の開発と普及によって、小規模農家も栽培規模の大きな稲作農家も、作業に適した大きさの農機具を購入して継続してきた。

 これは、コメ増産のインセンティブ効果も期待した「高米価政策」も移植栽培の継続に影響している。新しい機械を購入してコメを作っても、平均的な収穫が得られれば、その米を販売することで生産を維持できた。小規模兼業農家は機械作業代金を支払っても、コメづくりを維持することができてしまっていた。

 コメの国内消費と国内生産の需給バランスが取れている時は、全く問題なく維持継続できる。しかし、現在のコメの生産量を減らすための過度な転作奨励金や、消費者のコメ離れが進んでいる状況にはそぐわないものとなっている。

スマート農業が進むも、効果には疑問符が

 国もこの状態を改善すべく、近年、スマート農業の開発と実証を進めている。イネ栽培の生産性向上も政策的事業の目玉として急いでいる。しかし、主に開発を進めた大型トラクターやコンバインの自動運転システムや、収量モニター付きコンバインといった高額農機が農家に大きな利益を生み出すのかは、疑問である。

 イネの栽培についても、農業用ドローンが空からイネの生育状況を観察分析して、必要な肥料や病気の予防薬を散布し、AIが栽培管理するといった変化も起きている。しかし、イネの作付けは太古の昔と変わらず、苗を作り移植して栽培する方式を続けている。

 移植のための新機能を持った機械としては、水田を自動で直進する田植え機が開発され、苗を乗せて走行の指示を出せば、自動で田植えしてくれる機械が開発されている。ただ、人が運転しないための安全対策と、間違いなく移植するための各種センサーを組み合わせた高額な田植え機という側面もある。

 田植えには、移植作業の数日前に水田に水を入れて、土を良くこねながら平らにならす「代(しろ)かき」作業をしなければならない。今もトラクターで作業機を引いて、土をこね回して塊のない滑らかな状態にして、表面を平らに均す「代かきハロー」を使う。初心者には大変難しい作業の一つであり、移植作業そのものが良くできるかどうかと同時に、除草剤が最小の量で効果を出してくれるかどうか決まるのも、この作業の仕上がりの良さにかかっている。

 つまり、どんな高度な機械や生育管理機器を使っても、基本となる水田の移植前の「代かき作業」のできによってその後のイネの生育と収量にも影響してしまう。肝心の作付けについては、苗つくりをして田植えを行う移植栽培がなかなか変わる様子が見えないのである。

ドローンで種まき、その効果は?

 筆者は2019年から、ドローンでの湛水直播による試験栽培を継続している。イネの種を播くのは難しいことではないが、問題は播いた後のイネの成長のために、どのような品種を選び、「種まき床」にするのが良いかである。ドローンによる湛水直播栽培のための品種の開発や種まきへの準備、田植え前の土の作り方を実験し、これまでの移植栽培とコストや生産性を比較してみた。

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