World Energy Watch

2021年11月18日

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大場紀章 (おおば・のりあき)

ポスト石油戦略研究所代表

2008年京都大学大学院理学研究科博士後期課程を単位取得退学。エネルギー・環境分野の調査研究を行うシンクタンク・テクノバに入社。15年よりフリーとなり、21年より現職。株式会社JDSCフェローなども務める。

 また、これら二つの合意は、米国と中国も参加していない。バイデン大統領は、前政権の「アメリカ・ファースト」から脱却し、パリ協定に復帰、気候変動を外交安全保障上の重要テーマと位置づけて欧州や中国などと協調すると標榜していた。しかし、蓋をあけてみれば、これら二つの合意に参加しなかった。つまり、米国は中国と同じ後ろ向きの側についた。

 そしてさらに、ほとんど中身のない「米中共同声明」まで発表している。気候変動問題を推進したい欧州各国にしてみれば、米国は単に中国側に寄り添っただけで、まさに裏切られたような結果といってよいだろう。

 欧州内部においても、必ずしも足並みは揃っていない。たとえば、ガソリン車廃止の合意は英国が主動したが、ドイツ・フランスは入っていない。また、フランスなどEUの10カ国はCOP26に先立って、原子力発電をグリーン電力に入れてほしい(EUタクソノミーに組み入れる)と提言し、それをロシア政府が賛同するという奇妙な構図が生まれている。

分断の始まりという懸念も

 最終的な合意文書は、石炭火力の「段階的廃止」が盛り込まれる予定が、中国・インドの土壇場の反対により、「段階的削減」に修正されたと伝えられている。しかし、COPの合意文書に具体的な発電方法に関する記載が入ること自体が極めて異例のことである。

 パリ協定は、削減目標を各国が自主的に制定し、その実現方法については各自に任せられているというのが基本的な考え方だが、今回の文言はその精神を逸脱している。石炭火力の割合は、その国が置かれている地理条件によって大きく変わるため、特定の電源を名指しで規制することは国家間の不公平をまねいてさらに分断が広まるだろう。

 結局、ルールを極限までゆるくしたパリ協定では、すべての国が参加し大枠を合意したはいいが、その後ルールが再び厳しくなったことによって、再び分断状態へ逆戻りしている気がする。気候変動問題は、人類共通で合意できる数少ないテーマだが、今回のCOP26は後世の人々から見て分断の始まりだったと評されることになるかも知れない。

  
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