まず1点目は、「化石賞」を受賞したからといって、もとより大した意味はないということである。そもそも日本は今回「化石賞」をたった1回しか受賞していない。「化石賞」は通常COPの会期中毎日受賞されているが、今年のCOP26において、「化石賞」を最も多く受賞したのは、5回の受賞と殿堂入りを果たしたオーストラリアで、次いで2回の英国、米国、ブラジルが続いている。
そして、この賞自体大して注目されていない。この賞を主催する環境NGOのyoutubeチャンネルでは、連日受賞の報告動画を上げているが、多くてもせいぜい数百回、少ないものでは数十回しか再生されていない。
最も再生回数が多い動画は、日本が受賞された11月2日のものだが、それはそもそも「化石賞」を報じているのがほとんど日本のメディアだからだろう。そして、日本が化石賞を受賞したことを伝える英文記事は、今年も日本の英字メディアだけだった。これでは、日本の一部メディアは滑稽なマッチポンプを演じているに過ぎないということになる。
2点目は、日本がCOPにおいて存在感を追い求めることにどれだけの意味があるのかというということである。日本の二酸化炭素(CO2)排出量は世界第5位とはいえ、世界の排出量に占める割合は3.2%しかない(英石油大手BP による2020年のエネルギー統計)。自国の削減量自体のインパクトはそもそも大きくない。
また、途上国も含めすべての国が参加するようになったパリ協定以降のCOPは、もはや各国同士で削減目標値をギリギリと交渉しあう場ではなくなっている。つまり、自国が高い目標を提出したからといって、それが称賛され、説得力をもって他国の目標値に干渉できるということはない。
現在COPで求められているリーダーシップとは、各国の事情を汲みつつ全体の利害を調整し、より高い目標へ世界を導く力のことであり、単に身を切ることではないだろう。
注目すべきは合意内容
今回、日本の岸田文雄首相は、滞在時間8時間という強行軍でCOP26に参加し、世界リーダーズサミットでスピーチを行った。
その内容は、「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」を通じ、アンモニアや水素などによってアジアの火力発電のゼロエミッション化推進を支援するというもので、「誰一人取り残されることがあってはならない」という強いメッセージとともに、非常に洗練されていたよく練られたものだった。
筆者は、このスピーチは過去に日本政府が発信してきた気候変動に関するステートメントの中で最も優れたものだったのではないかと考えている。正直、岸田氏の自民党総裁選における公約を見る限り、ここまでの準備ができるとは期待していなかった。その意味で、日本政府はやるべきことはやったと評価してよいのではないだろうか。
ただ、COPを評価する上で本来重要なのは、日本の立ち振舞いなどではなく、そこで決まった合意内容だろう。例えば、今回のCOP会期内に発表された主な政府合意としては、「100カ国超によるメタン削減枠組み」、「24カ国による2040年ガソリン車販売禁止宣言」、「46カ国による石炭火力廃止宣言」などがある。日本が参加したのは、メタン削減枠組みだけだが、他の二つは今後の日本に大きな影響がある重要なテーマであり、今後の国際世論の高まりなど、その動向を注視する必要がある。