食品をクラス分けしてパッケージの前面に表示し、よい食品をわかりやすくする「Nutrient Profiling system(NPS)」を取り入れる企業や国も増えています。食品に含まれるたんぱく質や炭水化物量、熱量などの数値を示す栄養成分表示は、栄養学についてある程度の知識がないと意味がわかりにくいものです。
専門的な知識のない消費者もよい食品を区別できるように、AからEまでのクラス分けや星の数、赤黄青の信号マークなどを食品につけます。ネスレも、フランスで開発されたNutri-ScoreというAからEまでクラス分けする方式を採用し、一部の製品に表示する予定です。
世界の企業を評価するATNI
さらに、ESG投資家や食品企業が注目しているのが、「Global Access to Nutrition Index」という企業ランキング。オランダの非営利団体「Access to Nutrition Initiative(ATNI)」が公表しているもので、3年ぶりに公表された21年版では、表のような順位となりました。このような客観的な評価指標があれば、投資家はどこに投資するべきか判断しやすくなります。
世界の大企業25社が評価の対象となり、スコアがつけられました。スコアは、Governance(ガバナンス、12.5%)、Products(製品、35%)、Accessibility(入手可能性、15%)、Marketing(マーケティング、20%)、Lifestyle(生活習慣、2.5%)、Labeling(製品表示、10%)、Engagement(エンゲージメント、5%)をそれぞれ評価してつけられています。ちなみに、日本は明治、味の素のほか、サントリーが対象となり、同社は21位、スコアは1.1でした。
比重の大きなProducts、つまり製品は、オーストラリアのNPS、Health Star Rating(HSR)で評価しています。HSRは、熱量、飽和脂肪酸、糖類、ナトリウムを抑えているか、たんぱく質、食物繊維、野菜・果物・種実類・豆類を十分に摂れるかで食品をスコア化し、0.5から5までの星を付けるもの。ATNI2021年版では、25社の3万8176製品を評価し、31%の1万1797製品が基準の3.5星以上でした。
ATNIは投資家への要望として「Investor Expectations on Nutrition, Diet & Health」を策定しており、世界の71の機関投資家が賛同し署名しています。日本の野村アセットマネジメント、りそなアセットマネジメント、富国生命投資顧問、それに、三菱UFJトラスト&バンキングコーポレーション(米国)も含まれています。
対応なければASEANで売れなくなる?
今年10月、ATNIと野村アセットマネジメント、夫馬さんが代表取締役(CEO)を務めるニューラルが、日本にATNIを紹介するローンチイベントをオンラインで開催しました。
その中で、野村アセットマネジメントのシニアESGスペシャリスト・宮尾隆さんは、ファイナンシャルリターンと同時に、環境・社会課題の解決にインパクトをもたらすことも追求する「インパクト投資」を検討し、5月にATNIに参画したことを説明。「よりすぐれた食品会社に、より多くの資金、より長期の資金が流れることで、諸課題の解決に貢献できる」と語りました。
夫馬さんは、「栄養課題に後ろ向きの企業からは、投資家が去っていくことになる。欧米の流通・小売事業者の姿勢を見ると、日本企業の製品が海外の店頭で棚に置いてもらえない、ASEANで日本の食品が売れない、というような事態も想定される」と訴えます。
日本の食品企業にとって、栄養対策を視野に入れた製品づくり、サービス提供は、生き残ってゆくためにも急いで経営課題に取り込むべきものなのです。