2022年11月27日(日)

食の安全 常識・非常識

2021年12月8日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤、リスクコミュニケーション担当)。(記事の内容は、所属する組織の見解を示すものではなく、ジャーナリスト個人としての意見に基づきます)

 東京栄養サミット2021が12月7、8日、開催されています。栄養を巡るさまざまな課題について各国政府や国際機関、企業、市民団体などが取り組みを発表し、意見交換します。

12月6日に参議院議員会館で開かれたNPO法人主催の東京栄養サミットプレイベント。多くの国会議員が栄養と健康対策の重要性を訴えた(筆者撮影)

 世界は今、「飽食」と「飢餓」という両極端の栄養課題に同時に直面するといういわゆる「栄養の二重負荷」対応を迫られています。海外の食品企業は、製品を通じた栄養改善と健康への貢献を前面に打ち出し、食品企業の役割が激変しつつあります。

 一方、日本では栄養に対する社会の関心が高いとは言えず、実際には諸外国とは異なる深刻な問題が進行中なのに、東京栄養サミットへの関心もさっぱり盛り上がりません。それに、「伝統的な和食、手作りに戻って健康に」「オーガニックで安全・安心」というようなニセ科学の俗説が大手を振ってまかり通っているのも懸念材料です。

食品企業の〝評価指標〟も欧米流が浸透?

 陰ではさらに、困った課題が新たに生じています。肥満・飽食に悩む欧米が構築しつつある食品や食品企業に対する〝評価指標〟が、アジアや日本の食生活・食文化には合わないのです。

 このまま欧米型指標がグローバルスタンダードになると、日本の食品企業の海外市場拡大はおぼつきません。国内でも、豊かな食文化が否定されかねません。これは、日本の食の危機。東京栄養サミット開催に合わせて3回にわたって、日本が直面する健康と栄養の課題に迫ります。

 まず第1回は日本人の栄養の現状から。課題がある、と聞くと、食生活の洋風化による脂肪摂取過剰や加工食品の食品添加物などを心配する人が多いでしょう。しかし、専門家の見方は大きく異なります。

 厚生労働省が今年6月にまとめた「自然に健康になれる持続可能な食環境づくりの推進に向けた検討会」報告書が主要な課題として挙げたのは①食塩(ナトリウム)の過剰摂取、②若年女性のやせ、③経済格差に伴う栄養格差……の3点。予想以上に深刻な実態が見えてきました。

最大の問題は食塩の過剰摂取

 2019年の国民健康・栄養調査結果によれば、日本人の食塩摂取量の平均値は10.1㌘。1995年の13.9㌘から着実に減少しているように見えるのですが、高齢化で1人あたりの食事摂取量自体が減っていることなど考え合わせると、実は減塩はそれほど進んでいません。

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