日本人は1950年代には男性で平均して1日20㌘程度を摂っていたとされており、それに比べればずいぶんと減っています。しかし、「食事摂取基準2020」の目標量である男性7.5㌘、女性6.5㌘にはほど遠く、世界保健機関(WHO)の推奨量5㌘の2倍以上の数字。他国と比べても、かなり悪い状況です。
喫煙や高血圧など危険因子ごとに、どれくらいの関連死亡者が出ているかを調べた研究でも、塩分の高摂取は5番目。アルコール摂取や過体重・肥満よりリスクが高いことが示されています。
日本の特徴は、自宅調理から食塩を摂る割合が高く、醤油や味噌、マヨネーズなどの調味料類から食塩の6割以上を摂っていること。欧米ではパン、穀類、シリアルなど加工食品からの割合が高いため、これらで企業が加工の際に減塩を進めれば摂取量が下がります。
英国では、パン業界が少しずつ使用する食塩の量を減らして消費者が気づかないまま減塩が進み、結果的に国民の食塩摂取量は1割以上減りました。しかし、日本では加工食品で減塩されていても、醤油やマヨネーズなどを足して食べれば減塩にはつながりません。食文化が減塩を阻んでいる面があります。
若年女性のやせ問題も深刻
若い女性にやせている人が多いのも、他国と著しく異なる特徴です。ダイエット志向が異常とも言える状況です。日本肥満学会の定義では、体格指数(BMI)が18.5㌔グラム/立方㍍未満は「低体重(やせ)」とされています。その割合が、日本では9.3%(16年)。 経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会加盟国の中で際立って高いのです。2位は韓国(5.2%)。ほとんどの国が1〜3%にとどまっています。
若い女性のやせは、早産や生まれた時に低体重の子ども(低出生体重児)を出産するリスクが高いことが研究によりわかっています。実際に、2500㍉グラム未満の低出生体重児の割合は他国に比べて多いのです。低出生体重児は、成人後の生活習慣病リスクを上げる、との仮説が指摘されています。そのほか、若い女性自身も骨量が低いなど健康課題を抱えがちです。
経済格差に伴う栄養格差
日本は、親が一人で子どもを育てる世帯で貧困率が高く、15年のOECDデータでは、韓国に続いて世界第2位となっています。貧困は栄養と関連があり、収入が低いと栄養に気を配る余裕が出てきません。
18年の国民健康・栄養調査で食品を選択する際に「栄養価」を重視すると回答した割合は、世帯所得が600万円以上の世帯では男性34.3%、女性62.1%だったのに対して、世帯所得200万円未満では男性25.3%、女性45.1%と低くなりました。
栄養素摂取を細かく見ても収入により違いがあります。世帯の年間収入が200万円未満の人たちはエネルギー摂取量自体が低くなっていました。また、収入が増えるにつれて炭水化物エネルギーの比率が低くなり、脂質エネルギー比率が高まっていました。