世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年12月28日

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 新生南アフリカの出発から早4半世紀、南アフリカの政治は岐路に立っているようだ。これまで新生南アフリカを独占的に主導してきた中道左派の与党「アフリカ民族会議」(ANC)は、11月1日の統一地方選挙で得票数が過半数を割るとともに、同国第一の都市ヨハネスブルグ、首都のプレトリア等の主要都市の市長を失った。これは歴史的なことである。

 ANCの圧倒的な正当性は、(1)アパルトヘイトと闘いそれを終了させた党であること、(2)選挙で過半数を超える得票を確保してきたこと、にあった。選挙でANCが6割程度の得票を維持すれば南アフリカの政治は最も安定する、と言われてきた。

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 統一地方選挙では、リベラル中道政党の「民主同盟」(DA)が台頭したほか、ANCより左の「経済的解放闘士党」(EFF)も存在感を示し、成功した実業家で元ヨハネスブルク市長のマシャバが率いる「アクションSA」が上昇中である。なお、アクションSA党は、市場経済を擁護するが移民流入には厳しい。

 11月の選挙結果は、次の通りである。ANC46%、DA22%、EEF10%、インカタ自由党6%、自由戦線プラス(アフリカーナの党)2%、アクションSA2%。ANCはヨハネスブルグ等の主要都市の他、クベルハ(旧称ポート・エリザベス)でも負けた。

 2024年には総選挙が行われる。それは1994年の初回民主選挙以来最重要の選挙となる。エコノミスト誌12月6日号の社説‘South Africa is slowly edging towards a post-ANC future’は、ANCがこの選挙で負ければ、ANCは連合政権を組まねばならなくなるとして、如何なる連合が可能なのか問題提起している。

 南アフリカではANCを代替する政党はない。野党のDA、EFF(党首は元ANC青年部リーダーで、同党から追放された)、アクションSA党との連合が選択肢になるが、社説は、アクションSA党首ハーマン・マシャバがキング・メーカーとして大統領候補に浮上するかもしれないと言う。興味深い見方である。

 アクションSA党のマシャバは、そもそもヨハネスブルグ市長選にはDAの候補として出馬、EEFの事実上の支持を得て、市長になったというから連合政権の組織化の経験は有り、ものの考え方は基本的に穏健なように見える。なおDAは右傾化しつつあるというが、これは南アフリカの政治にとっても良いことではない。

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