関西電力の資料によると、同社堺太陽光発電所の設置面積は21万m2、設備容量1万kW、年間発電量1100万kWh。一方、液化天然ガスを燃料とする堺港火力発電所の設置面積は10万m2、設備容量200万kW、年間発電量は140億kWhだ。面積が約半分の火力発電所の設備容量は太陽光発電所の200倍、発電量は1300倍に近い。面積当たりの発電量では2700倍の違いがある。
設備容量に対する発電量が大きく異なるのは、設備の利用率が異なるためだ。先に挙げた六ケ所ソーラパークの利用率は12%程度、堺太陽光発電所の利用率も13%程度だ。太陽光パネルの効率と日照時間から利用率には限度がある。
資源エネルギー庁は20年度の最新の設備の平均利用率を17.2%と推定している。既に設置されている事業用設備の平均利用率は20年5月までの1年間で14.2%だったので、向上はしているが、革新的な変化がある訳ではない。
原子力発電所の利用率は、国により異なるが80%から90%になる。80%と想定すると、同じ発電量を太陽光設備で得るためには、5倍から6倍の規模の設備が必要になる。100万kWの太陽光設備の発電量は、原発1基分ではなく5分の1以下だ。原発1基分の発電量に相当する550万kWの太陽光発電設備導入に必要な面積は、山手線の内側の面積の約2倍になる。
事業用設備の中には工場などの屋根に設置されているものもあるが、FIT制度の下で設置された事業用、家庭用合計6300万kWの設備の設置面積を計算すると、約1400平方キロメートルになる。日本の中で37キロメートル四方の面積が太陽光パネルにより占められている。
消費者負担で導入量は増加
FIT制度により、太陽光発電設備は急速に増加した。他の再生可能エネルギー電源との比較で、太陽光に設備が集中したのは、買取価格が設備設置者に有利であり、複雑な設備も必要なく短時間で事業を始めることが可能だったからだ。10kWの設備以上を対象にする事業用太陽光設備から発電された電気の買取価格と設備導入量の推移は、図-2の通りだ。
買取価格が下落しているのは、太陽光パネルの価格が下がり、工事費なども下がっているからだ。12年の事業用パネルの平均価格22万5000円は、20年12万1000円まで下がった。
FITが導入された12年当時、太陽光発電から電気の買取価格は、当時の欧州主要国のFIT制度の買取価格の2倍以上になる1kWh当たり40円(税抜き、10kW以上-事業用)から42円(10kW未満-家庭用)に設定された。パネル販売事業者がパネルの価格を他国よりも高く設定しても、発電事業者あるいは家庭は利益を出せるため、日本でのパネル価格は他市場より高いと言われていたが、今でも日本のパネル価格は多少高いようだ。
図-3は国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のデータだ。太陽光発電設備を導入した際のプラントライフを通しての平均発電コストの推移を示している。パネル価格以外の要素もあるだろうが、主要4カ国の中ではやはり日本のコストが最も高い。