2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2022年2月4日

 毎年のFITの総買取額のうち、事業用と家庭用太陽光発電設備が占める金額は図-4の通りだ。制度開始から21年9月までの累積の買取額は、事業用12兆4400億円、家庭用2兆5500億円、全ての再エネ電源を含めると総額19兆800億円だ。太陽光からの電気の買取に8割近く使われている。

 再エネの発電により節約された化石燃料代などの回避可能費用もあるので、19兆円全てが消費者負担にはなっていない。21年度の場合、買取総額3兆8400億円のうち約3割、1兆1400億円が回避可能費用なので、累積の消費者負担額は、13兆円から14兆円、国民1人あたり10万円以上になっている。

 政府の第6次エネルギー基本計画では、30年時点の再エネの導入量は現在の2倍になる計画になっており、風力発電量は5倍、太陽光は2倍になる想定だ。消費者の負担増はまだ続くが、導入時だけでなく設備の廃棄時点でも負担が発生するかもしれない。

大量廃棄時代がもうすぐに

 太陽光発電設備の寿命は、20年から30年とされている。FITによる大量導入が始まってから10年なので、廃棄される設備が出てくるまでには時間がありそうだが、そうでもないかもしれない。

 10年前に導入された発電設備の効率は今よりも劣り、利用率は低かった。おまけにパネル価格も高かった。発電した電気の買取価格は10年で下落し、FIT制度でも消費者負担を抑制するため入札制度の導入などが行われているので、事業としてのうま味は薄くなったように思う。

 それでも、家庭用、あるいは小型の事業であれば、FITで認められた買取価格に影響を与えない範囲内でパネルを入れ替えれば、採算が向上する可能性がある。パネルは年々効率が落ち利用率が下がる。

 パネルの価格も10年前の約半分だ。10年経ったパネルを入れ替えれば、収益が増える可能性がある。そうすると古くなったパネルはどうなるのだろうか。効率が落ちたといってもまだ使えるパネルなので、途上国に安く輸出される可能性がある。

 中古のパネルを使う途上国では、廃棄物に関する規則は先進国ほど整備されていないので、途上国で使えなくなったパネルは、不法投棄される可能性がある。パネルにはカドミウム、鉛などの有害物質が含まれており、環境に寄与するはずの太陽光パネルが環境を悪化させるかもしれない。

 1000kWの太陽光パネルが90トンの廃棄物を発生させるとされ、IRENAは50年までに世界では最大7800万トンのパネルの廃棄物が発生すると予想している。国別の廃棄量の予測は図-5の通りだ。

 今後、多くの国でパネルの早期入れ替えが進み、IRENAの想定よりもパネルの廃棄量が大きく増える可能性も指摘されている。この廃棄物には銀、銅などの有用な資源も含まれている。リサイクル可能だろうか。

パネルのリサイクルは可能か?

 適正に処分されないパネルが不法投棄されることがあるだろう。あるいは事業者が破綻し、廃棄できないパネルも出てくるだろう。欧州連合(EU)では、パネルの廃棄はパネル製造事業者の責任とされ、販売価格に処理費を含めることが要求されている。

 米国でもワシントン州では同様の制度が導入されている。日本でも、太陽光発電事業者が発電量に応じ廃棄費用の積立を開始する制度が今年始まる予定だ。


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