「佐渡金山」と聞くと、幕府の直轄事業で罪人を使って運営していたもの……。
このように思っている人もいるかもしれないが、それは大きな間違いだ。
むしろ初期の金山は、民間に「稼ぐ」チャンスを与えることで大いに成功したのだ。
翻って今はどうか。金融緩和をしても民間を動かさなければ、強い経済は復活しない。
安倍晋三首相が掲げる経済政策、いわゆるアベノミクスが動き出した。「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」を「3本の矢」として、同時に実行する。
物価目標(インフレ・ターゲット)を掲げた金融緩和はさっそく日銀が政権に歩み寄る形で実行に移された。財政出動も補正予算や来年度予算に盛り込まれ、動き始めている。問題は3本目の矢である成長戦略だ。
成長戦略は過去の政権で何度も策定されてきた。民主党政権でも「新成長戦略」「日本再生戦略」という名前で政策が打ち出されたが、日本経済を立て直すには至らなかった。では、アベノミクスの成長戦略は効果をあげるのか。アベノミクスの成長戦略に特長があるとすれば、「民間投資を喚起する」という修飾句が付いたことだろう。
民間企業は剰余金を溜め込むばかりで、設備や研究開発への投資を渋ってきた。民間の「企業マインド」が冷え切っているのだ。昨年、財務省の内部チームが分析した「日本経済が成長しない理由」の結論もそこにあった。民間が動かなければ、いくら金融を緩和をしても強い経済は復活しない、というものだ。
その具体的な処方箋として出てきたのが「官民ファンド」の相次ぐ設立だということを1月号の本コラムで触れた。民を動かすために官のカネを入れるという発想である。だが、官民共同出資となると、国がどこまで民間のビジネスに介入していいのか、という問題に突き当たる。
そんな官と民のあり方を考えるヒントが新潟県佐渡市にある。今は観光名所となり、世界遺産への登録を目指している佐渡金銀山だ。江戸期の佐渡は幕府の直轄地で、産出される金や銀は幕府財政を支えた。