ウクライナ出身の応援団
グラム氏と一緒に記者会見に臨んだウクライナ・ノシフカ出身のビクトリア・スパーツ下院議員(中西部インディアナ州第5選挙区選出)は、ロシアがウクライナでジェノサイド(集団虐殺)を行っていると強く非難した。スパーツ下院議員はウクライナ国旗の色である青色のジャケットと黄色のブラウスを着て、一般教書演説に参加した議員である。
ウクライナ・キーウ(キエフ)出身でトランプ前政権の国家安全保障会議欧州担当部長であったアレキサンダー・ビンドマン元米陸軍中佐は、ウクライナに対する一層の軍事支援を訴えた。
ビンドマン元陸軍中佐は19年11月に米議会で開催された「トランプ弾劾裁判」で、トランプ前大統領に不利な証言をした。非公開での公聴会では、トランプ氏がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に首脳会談開催の条件として、バイデン親子とガス会社プリズマとの調査を要求したと証言している。
元共和党員が立ち上げた反トランプ色が強いリンカーン・プロジェクトとのインタビューで、ビンドマン氏はロシアのウクライナ侵略に関して「米国の価値観が危機にさらされている」と指摘した。民主主義国家ウクライナは専制主義国家ロシアの侵略を受けているが、それは米国の民主主義の価値観に対する挑戦でもあるというのである。
さらに、ビンドマン氏は『フォーリン・アフェアーズ』(電子版22年3月6日)に共同寄稿し、バイデン政権が超党派で新しい「武器貸与法(Lend-Lease Act)」を成立させて、ウクライナに大量のさまざまな軍需物資を供与できるようにすることを提案した。軍需物資の中には、すでに供与しているジャベリン以外の対戦車ミサイルも含まれる。
スパーツ下院議員やビンドマン元陸軍中佐のようなウクライナ出身の応援団が、同国への安全保障面、経済面並びに人道面への支援強化を求めているのだ。
余談だが日本も有事の際、日系議員や政権幹部の応援が不可欠になるだろう。
米国人の戦争に対する意識
バイデン大統領はロシアの金融機関や中央銀行の資産凍結、ハイテク技術の対露輸出規制、国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシア銀行排除、プーチン露大統領およびドミトリー・ぺスコフ大統領報道官や政権に近いオルガルヒと呼ばれる大富豪の海外資産凍結、ロシア機の領空飛行禁止からロシア産原油の輸入禁止まで、さまざまな制裁カードを切った。
にもかかわらず、プーチン大統領はウクライナ侵略を止めない。エコノミストと調査会社ユーゴブの共同世論調査(22年2月26日~3月1日実施)によれば、「制裁がロシア侵略を止めると思いますか」という質問に対して、29%が「はい」、44%が「いいえ」と回答した。
同じ質問に対して20年米大統領選挙でバイデン氏に投票した有権者は38%が「はい」、37%が「いいえ」と答えた。バイデン支持者でさえ、4割弱が経済制裁はロシアの侵略を止めることはできないと信じているのだ。
同調査では57%が「5年前と比較して世界大戦が起こる機会が増えた」と回答した。また、48%が「5年前と比べて核戦争の機会が増えた」と答え、26%の「同等」と12%の「機会が減った」を上回った。今回のロシアのウクライナ侵略は米国民の間に戦争勃発の懸念を確実に高めたようだ。
「ロシアのウクライナ侵略は米露戦争に導くと思いますか」という質問には、44%が「思う」、34%「思わない」と答えた。「思う」が「思わない」を10ポイント上回った。米国がロシアのウクライナ侵略を阻止できない場合、米国民は米露の軍事衝突があり得ると考えている。
「仮に米国とロシアが戦争をした場合、どちらが勝利すると思いますか」という質問には、36%が「米国」と「勝者なし」、6%が「ロシア」と回答した。「米国」と「勝者なし」に2分された。