ワクチン2回接種こそが
ゲームチェンジャー
集団免疫の獲得に到達するには二つの方法が考えられる。一つは自然免疫で獲得すること、もう一つはワクチン接種によって多くの人が免疫を獲得することである。累計死亡者数を減らすという観点からすれば、明らかに後者の方法が得策だろう。だが、先に記したように3回目接種の追加的価値は、最初の2回接種よりも相対的に小さい。したがって、行動制限によって感染抑制させるのではなく、感染拡大を許容する政策の正当性が増している。
多くの国民が3回目接種を終えるまで、その時間稼ぎとして行動制限を続けるとすれば、そのロジックは4回目接種、5回目接種でも成り立つことになる。このロジックは、反永久的に行動制限を正当化できるため、これに依存しすぎることにはリスクが伴うことも指摘しておきたい。それでは、社会経済への犠牲は膨らむ一方である。
筆者の分析では3月2日現在、第6波は、重症化率が0.043%と第5波の約15分の1程度にすぎないが、先のロジックによって、オミクロン株の重症化率が低いから方向転換するのではなく、すでに8割の国民がワクチン2回接種を終えたことこそがゲームチェンジャーだと考える。事実、英米など海外では、2回接種が終わった時点で行動制限が緩和されている。
以上を踏まえれば、感染症対策と社会経済活動との両立に向け、大きく方向転換するのは第5波の後、第6波の前が自然だったと言える。現実には、第6波において、感染拡大許容という方向にある程度舵を切ったが、時短要請などの行動制限策も継続された。
欧米より圧倒的に感染者数、死者数が少ない中、国民のコロナ感染リスクに対する態度や価値観を所与とするならば、日本は、今後も海外と比べて相対的に感染者数・死者数が抑えられるものの、経済回復はますます遅れることになる。2年で終わるものが3年、いや、それ以上かかる懸念すらある。
果たして、いつまで現状のような選択を続けるのか。今まさに日本としての決断が迫られている。
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