2022年11月30日(水)

World Energy Watch

2022年3月23日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

大活躍した揚水発電とは

 ご存知の読者も多いだろうが、改めておさらいしておきたい。電気の需要量は、1日を通し、1年を通し変動する。例えば、夏の午後には冷房需要が高まる。あるいは冬の夕方には照明、料理、暖房などが重なり、需要が大きくなる。

 電気は必要な時に必ず必要な量を供給しなければ停電する。そのため、最大の需要量がある時に備え発電設備が建設されている。燃料費が高い石油火力の中にはピーク時にしか利用されず、年間数%の利用率になるものもあるが、低利用率の設備がなければ需要量が多い時には発電量が不足し停電する。

 電気を貯めて使えば良いように思うが、電気を大量に貯める実用的な方法は揚水発電しかない。大型蓄電池、あるいは電気を水素に変え貯めておく方法もあるが、大型蓄電池の価格は高く、貯めると電気のコスト(家に届く電気料金の請求書には使用量キロワット時(kWh)が書かれているが、このkWhを発電するコスト。火力発電であれば、数円から十数円。これに送電、配電するコストが掛り、家庭用であれば1kWh当たり二十数円になる)が高くなり、実用化は特殊な場所以外では行われていない。電気が余った時に水を電気分解することにより水素に変えておくことも理論的には可能だが、コストは蓄電池よりも高くなるので、実用化は先の話になる。

 揚水発電では電気が余った時にポンプを使い、下の池に溜まった水を上の池に上げておき、電気が足らない時に上の池から水を落とし水力発電を行う。東日本大震災以前には、原子力発電所が多く稼働していたが、原子力発電所は一定の稼働率で運用されるので深夜に電気が余ることがある。その余った電気を使うために揚水発電設備は利用されたが、今は、太陽光などの再生可能エネルギーの電気が余る時にも利用される。

 揚水のポンプを動かしても電気が余ることもあり、その時には再エネ設備の出力制御が行われる。3月22日の東電管内の電力供給では、揚水発電設備がフル稼働した。

停電寸前だった電力供給

 1日中節電要請が行われた3月22日の東電管内の電力需給状況は、図-2の通りだ。日本の事業用発電設備約2億7000万kWの内、水力が4960万kW、その内揚水は2750万kWを占めている。

 ダム式、水路式よりも多くの発電能力がある。東電グループが保有する揚水発電設備容量は768万kW。図-2を見る限り9時から正午にかけて、ほぼフルに発電していたことが分かる。

 揚水発電は、水を落として発電するので水がなくなれば発電できなくなる。その水の量は3月22日7時時点を100%とすると、運転を終了した22時時点で29%となった。一方、東電管内では、22日7時から16時までの間、東北電力から九州電力までの7電力から最大約142万kW、16 時から24時まで北海道電力など5電力から最大約93万kWの電力融通が行われている。

 図-2を見る限り、融通電力と節電努力がなければ、揚水発電の水も底を尽き夜間には停電が発生していただろう。今、東電管内では原子力発電所が稼働していないので、深夜に電力が余る状況にはなく、揚水発電のため水を上池に上げるには、化石燃料を燃やし火力発電でポンプを動かすしかない。揚水発電のコストは決して安くない。

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