2022年12月4日(日)

World Energy Watch

2022年3月23日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 化石燃料の輸入価格は大きく上昇している。21年1月の輸入価格と今年1月の価格を比較すると、石炭(燃料用一般炭)は8400円から2万1000円に、LNGは4万5000円が8万2000円に、原油は3万2000円が5万8000円に上昇している。これから円安が価格上昇に追い打ちをかけることになる。

 大手電力は設備更新を行うことが、ますます困難になる。再エネ主力電源化の掛け声の下、30年に向けて再エネ導入が進む中で電力供給の不安定化は増すことになる。

電力の安定供給と価格安定のためには

 エネルギー危機の最中にある欧州では、再エネと並行して原子力発電の導入支持の声も高まっている。電力の安定供給と価格の安定化の選択肢は原子力の活用しかないと欧州の多くの国が考え始め、現在、13カ国が原子力推進の声を上げている。オーストリアなど4カ国は原子力反対と表明しているが、送電網が連携している欧州では4カ国も他国の原発からの電気を輸入し使うことになる。

 再エネ導入と電力市場自由化を同時に進めた日本では電力供給は欧州よりも不安定になっている。電力供給が不安定化すれば3月22日のように停電を恐れながら1日を過ごすことになる。電力の安定供給と電気料金の安定化のためには原発の再稼働を進め、小型モジュール炉(SMR)などの安全性に優れコスト競争力があるとされる新型炉の開発を進めるしか方法はない。

 今回、政府は初の「電力需給ひっ迫警報」を発令した。必要なことであると理解できるが、発令することのみが政府の役割ではない。安価で安定した電源を確保し、国民の生活と産業をしっかりと守るために必要なエネルギー安全保障の政策を打ち出し、実行することこそ、政府の真の役割であることは論を俟たない。

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