2024年12月4日(水)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年3月26日

海外から流入する「密漁・無報告」の水産物

 違法操業などは「違法・無報告・無規制(Illegal, Unreported and Unregulated)」の頭文字をとって「IUU漁業」と呼ばれ、持続可能な開発目標(SDGs)においてもその廃絶が目標として定められている。

 日本でIUU由来のものが流入しているのではないかと疑われているものとして、イカが挙げられる。ある研究によると、17年に900隻以上、18年に700隻以上の中国船が北朝鮮海域で違法漁業を行っており、日本と韓国を合わせた量(16万4000トン以上、4億4000万ドル以上)に匹敵するスルメイカを捕獲したと報告されている 。この違法漁業に関与する船団の規模は、中国の遠洋漁船隊全体の約3分の1の規模とも指摘されている 。

 別の研究によると、違法・無報告漁業由来のイカが輸入されたことにより、国内イカ産業の収益金額の15~29%に当たる243億~469億円が失われたと報告されている 。業界団体である全国いか釣り漁業協会も繰り返しIUU漁業に対する取り組みの強化を訴えている。

 そもそもスルメイカの漁獲量は1968年には66万8000トンあったものが2021年には過去最低の3万2000トンを記録するなど、不漁にあえいでいる 。水産庁「不漁問題に関する検討会」の報告書は、海水温の上昇といった環境の変化が近年の不漁の要因として考えられると指摘している が、同報告書にも引用されている水産研究・教育機構が実施している資源評価では、スルメイカは「乱獲状態」にあるとされている 。IUU漁業はスルメイカ資源に対するさらなる打撃を与えるものとなり得よう。

船員への人権侵害も行われる諸外国の遠洋漁業

 IUU漁業に関しては、環境NGOのEnvironmental Justice Foundation (EJF)が、中国漁船の一部で人権侵害とともに行われており、そうした形で漁獲したマグロの一部が日本にも流入した疑いもあると発表している。

 EJFがある中国の会社が所有する遠洋漁船7隻の船員15人に聞き取り調査したところ、船員に対する暴力、長時間労働の強要、違法な操業などの実態が明らかとなったのである。ある船員は船長と上級船員からの身体的暴力や「海中へ投げ込む」という言葉による脅しを受けたり、ある船員は24時間勤務のシフトを強いられていた。また、船員の多くは給料を天引きされた上に、何カ月も給与が支払われなかったというのである。

 「調査対象となった会社の所有するある漁船では、4人のインドネシア人乗組員が医療を受けられず、最終的に死亡し、一部は洋上に流す処置が取られた」とEJFの担当者は語る。

 調査では、乗組員に対する深刻な人権侵害に加え、フカヒレの除去やサメの遺体の海上投棄、シュモクザメ、オナガザメ、ヨゴレといったサメ類の捕獲、イルカやオキゴンドウの屠殺などが船上で行われていたことも明らかとなっている。ヨゴレは、積載や水揚げがマグロ類を管理する各種国際漁業委員会により禁止されており、またいずれのサメ類についても、ヒレだけを切って胴体を投棄することが同じく多くの国際漁業機関で禁止されている。

 EJFによると、これら調査対象となった7隻の中国漁船は合計9隻の冷凍貨物船に洋上で積荷を転載した可能性があり、この貨物船はその後日本に寄港しているとしている。以上はたまたま中国の事例であるが、「IUU漁業や人権侵害は中国遠洋漁船に限られず、近隣では台湾、韓国の漁船でも起きている」とEJFの担当者が語るように、世界のさまざまな場所で見受けられる問題である。


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