2024年12月12日(木)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年3月26日

 気仙沼でまぐろはえ縄漁業を経営し、大西洋クロマグロで世界初の国際的な海のエコラベルである「MSC」認証を受けた臼福本店の臼井壯太朗社長も、「日本にはIUU由来のマグロが大量に流入している」と警鐘を鳴らす。同社が運営するマグロ漁船が入港するスペイン・カナリア諸島のラスパルマスや南アフリカのケープタウンにも「IUU漁船とおぼしき船が大量にいる」と話す。

 劣悪な労働環境の下で違法な形で漁獲された水産物は、正当な労働単価を支払い各種の規制を遵守して操業する漁船が漁獲する水産物より価格は安くなるであろう。「資源管理をしっかりすれば魚価が上がると言われたが、逆に値段が下がっている」として、IUU漁業対策強化を強く訴えている。

日本で進む水産流通適正化法への課題

 こうした問題に日本政府はただ手をこまねいているばかりではない。20年12月、市場から違法な水産物を排除するため「水産物流通適正化法」が成立し、対象魚種の選定が現在行われている。

 同法では国内で違法・過剰な採捕が行われるおそれが大きい魚種を「特定第一種水産動植物」に指定。採捕者らは行政機関に届け出て、その際に通知される漁獲番号を伝達の上で取扱事業者らに漁獲物を譲渡し、買受業者、流通業者、加工業者らは漁獲番号などの情報について事業者間で伝達しなければならず、適法に採捕されたことを示す国発行の漁獲証明書を添付しなければ輸出してはならない、と定めている。

 また、国際的にIUU漁業のおそれの大きい魚種を、「特定第二種水産動植物」に指定し、指定された水産物は、適正に漁獲されたことを示す外国政府の政府機関等発行の証明書を添付していなければ、輸入してはならないと定めている。現在、「特定第一種水産動植物」についてはアワビ、ナマコ、および稚ウナギ(シラスウナギ)、「特定第二種水産動植物」についてはサバ、サンマ、マイワシ、イカの4種が候補に挙がっている。

 密漁・IUU漁業の問題が指摘されている稚ウナギやイカが候補として加わったことは一歩大きな前進である。しかし、稚ウナギは密輸由来の疑いが強いものが多く輸入されており、今後は輸入品が指定される「第二種」にも指定されるべきである。また、マグロについても早急に第一種・第二種ともに指定すべきである。

 カツオ・マグロ漁業者の業界団体である「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」もこの1月、マグロの第二種適用を求める要望書を提出し、最大の消費国としてIUU漁業によるマグロが国内で流通しないように求めている 。

監視体制を強化しないとIUU水産物の巣窟になりかねない

 加えて、近い将来にできるだけ多くの魚種を水産流通適正化法の対象とすべきである。同種の規制を先駆けた欧州連合(EU)では、加工製品を含む天然魚に由来する水産品全てがトレーサビリティを確保するため「IUU漁業規則」の適用対象となっており、EU域内に輸出する場合、漁獲証明書の提出を義務付けられている。

 また米国では、輸入額の約40%を占める13種19魚種が漁獲証明制度の適用対象となっている。主要な水産物の輸入国が規制を強化する中、日本が緩い規制のままでは、IUU由来の水産物が日本に集まってきかねない。対策を急ぐべきである。

 さらに、国内における違法・無報告な水産物の採捕を抑止するため、執行体制の強化が必要である。18年に改正された漁業法では悪質な密漁が行われているおそれが大きいものを「特定水産動植物」に指定し、その違法な採捕・運搬に対して最大3年以下の懲役または3000万円以下の罰金が科されることとなっている。しかし、それ以外についての罰金は最大でも300万円、大間でも問題となった漁獲量の報告違反の罰金は最大30万円であり、違反抑止のために十分とは言えない。現在漁獲の報告等に対する行政などからのチェックやモニタリング体制についても十分とは言えず、そのことが熊本のアサリや大間のマグロの問題が発生した一因と言えよう。

 漁獲記録の電子化などIT技術を活用なども通じ、トレーサビリティを担保する試みが必要と言えよう。

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 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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