トランプ政権で大統領副補佐官を務めたマシュー・ポッティンジャーが、ウォールストリート・ジャーナル紙論説委員のアダム・オニールによる取材に対し、ロシアのウクライナ侵攻が1950年の朝鮮戦争と多くの共通点を有しているとして、これが自由世界と独裁政権グループとの対立の口火となるだろうと論じている(3月18日付け‘Russia, China and the New Cold War’)。
ポッティンジャーは、中露関係は本来、深くも広くもなく、緊密な関係は不自然なのだが、習近平とプーチンの個人的関係が中露関係の中心となったと分析する。そして、2月4日の共同宣言は中露が「民主主義を弱体化させるために、それぞれの勢力圏を拡大することに協力する意図を明らかにしたもの」であると指摘、米国対中露の「新冷戦」に向かうことを示唆する。
その上で、ポッティンジャーは、結論としては、中露の独裁者は下り坂にあると主張する。「新しい冷戦」の勝利とは、核保有大国同士の正面対決にならないよう紛争を管理しようとすることであり、権威主義的な大国の弱点を利用して時間とともにその優位性を侵食させることであり、ロシアと中国の独裁者の行動を率直に非難しながら、同時にその国民との間の連帯と共通の大義を維持することだ、と論じている。
上記のポッティンジャーの個々の論点については、少し物事を単純化し過ぎているきらいがあるが、ワシントンにおいては、同氏のような「中露が手を結び米国を中心とする世界に対抗している」という認識が一般化しているようである。雰囲気的には、恐らくこの見方が主流となったのであろう。
習近平自身が、米国のそのような判断を助長する言動をしてきた側面もある。例えば、昨年2月に書かれた党中央のシンクタンク研究者の一文は、習近平が2012年に打ち出した「この百年なかったような大変化」の重要性を解説している。
その内容は、世界は大きな転換期に入り、国際的な枠組みと統治システムに大きな変化が生じ、力関係の変化は中国に有利に展開しており、中国が世界の中心に立つ日も近い、という楽観的な認識に立っている。それ以来、2月4日の中露共同声明まで、その認識に従って行動してきたと見ておくべきだ。