2024年5月22日(水)

Wedge REPORT

2022年4月21日

まちの銭湯を拠点に考える
地域の健康づくりとは

 都市部でも、高齢者と地域のつながりの輪が広がっている。

 「『医療従事者』と『患者』としてではなく、〝私〟と〝あなた〟で高齢者と出会い、支えたかった」と語る藤澤春菜さんは、保健師の資格を生かし、自らが住む地域位にある銭湯・小杉湯(東京都杉並区)を拠点に地元高齢者の健康づくりに取り組む。きっかけは18年、看護師として働いていた頃に経験した銭湯でのある出来事だった。

 「少子高齢化が進む中で『ただ病院で患者を待っているだけでいいのか』という疑問が常にあったが、医療従事者が地域に入っていくにも接点がない。焦燥感の日々を過ごしながらふと銭湯に立ち寄った際に、高齢女性2人が脱衣所の椅子に座って身体について話し込んでいた」と話す藤澤さん自身も、平日の昼間で他の客がいなかったこともあり、気づけば彼女たちの会話の輪に入り込んでいたという。

 「互いに客同士もあってか、自身の身体や病気のことについて熱心に話している2人を前に、『私が本当に聞きたかった話はこれだ』と直感した。病院でナース服を着ている自分対しては受け身でいる高齢者が、こういった場所では同じ目線で本当の悩みや不安を語ってくれる」

 その後、縁が重なって小杉湯のコミュニティナースとなった藤澤さんはまず、のぼせ防止など、スタッフ向けのレクチャーから活動を始めた。20年10月には小杉湯を通じて知り合った、地域医療に興味を持つ有志5人で「小杉湯健康ラボ」を結成。看護師、スポーツ医学を専門とする大学教授、カジノディーラーなど、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーとともに、待合室で健康相談に乗る「となりの保健室」、認知症予防となるカジノを用いた脳トレ「鍛の湯(かじのゆ)」、健康新聞の発行など、数々の取り組みを実施する。

「小杉湯健康ラボ」のメンバーと談笑する藤澤春菜さん(右から2番目) (WEDGE)

 特に力を入れているのが、健康ラボのメンバーや地域の医療・福祉機関の専門家とともに地域を歩く「夕焼け散歩」だ。高齢者5人の参加から始まったこの取り組みは、今では40人を超える賑わいをみせる。最初は感染防止のため、屋外での健康相談を目的としていたが、実施するうちに『散歩』の思わぬ効用に気づいた。

 「適度な運動となるだけでなく、出入り自由で誰でも気軽に参加でき、地域の人との接点を持つことができる。散歩コースの地元店舗を回って、参加者に手を振り返してもらえるよう呼びかけた『セイハロー・プロジェクト』では、地域の店員に向かって参加者がいつまでも嬉しそうに手を振っていた。われわれの活動を通じて、社会参加の喜びを実感して欲しい」

 今後は高齢者の「食」や「入浴」といった課題へアプローチするような取り組みを実施したいという。 

散歩中に、地元店舗に手を振る参加者たち(kosugiyukennkolab)

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