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2022年4月21日

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地元企業が支援する
気づきのネットワーク

 東京都大田区には、地域の専門職、企業、住民が一体となって地元の高齢者を見守る仕組みが根付いている。任意団体「おおた高齢者見守りネットワーク(通称:みま~も)」は今年4月で08年の設立から丸14年を迎えた。

 設立当時、発起人である澤登久雄さんは地域包括支援センター長として地域医療に携わる中で、専門職としての〝限界〟を感じたという。

 「相談窓口には介護保険やサービスに関する月1万件を超える問い合わせがあったが、それでも、独り暮らしで認知症が進み、自らSOSの声を上げられないような高齢者にはアプローチできない。近隣住民からの通報などによって彼らに辿り着いた頃には重度の要介護状態で、できることは限られるといった場面に何度も遭遇した。専門職だけの〝点〟で抱えるのではなく、地域の〝面〟での支える仕組みが必要だった」

 澤登さんがまず頼ったのは地域に根差す企業だった。「地域の高齢化は地元企業にとっても共通の課題なので、企業が集まり情報を共有し、知恵を出し合う場があれば、自社の得意分野を生かしたまちづくりのアイデアが生まれるはずだ」と考えた澤登さんは、地元企業に掛け合い、協賛企業としての協力を取り付けた。年間4万円以上の協力金が必要にもかかわらず、設立当初はわずか5社だった協賛企業は2019年度には70社となった。

 最初の主な活動は、協賛企業による高齢者向けの「地域づくりセミナー」だった。薬局による薬の話や信託銀行による終活の話からおむつメーカーによる尿漏れ防止の話まで、協賛企業ごとの特色を生かしたテーマは多岐に渡り、3年目には毎月100人を超える参加者が訪れるようになった。セミナーを訪れた高齢者を中心とする地域住民と、「みま~も」に所属する地域包括センター職員や協賛企業の社員との交流が活発になった段階で「みま~もサポーター制度」を導入した。「みま~も」の活動に賛同する地域住民や高齢者自身が年間登録料2000円を支払い、ともに活動を担っていく制度だ。サポーターには前出のセミナーの案内が届き、年1回無料で体力測定が受けられるほか、みんなで一緒に野菜や花を育てたり、健康体操や手話ダンスを実施したりするなど、サポーター同士のさまざまな交流活動に参加できる。ときには高齢者自身が講師や世話役として参加することもあり、活動を通して専門家から学んだ「絵本の読み聞かせ」を地域の保育園で披露したり、若い親世代向けに教えたりといった場面もある。

高齢者同士が協力して共同畑で花や野菜を育てる「みま~もガーデン&ファーム」 (MIMA-MO)
「手話ダンス」を踊るみま~もサポーター(MIMA-MO)

 「みま~も」の活動の最大の特徴は、国の助成金や補助金を一切使わず、協賛企業と住民サポーターから得る協力金のみで運営している点だ。この仕組みは各地に広がり、鹿児島、名古屋、群馬など、全国12地区に水平展開されている。

 「活動を始めて10年以上が経過し、初期の頃から参加している方の中にも、認知症や要介護の症状が現れ始めた。けれど、専門職であるわれわれスタッフも、そして地域の皆さんも、『みま~も』の活動を通じてその方と長年付き合ってきたので日々の変化に気づける。また、その方が『どんな人生を歩みたいか』をよく知っているので、必要な支援に向けて手を差し伸べられる。その瞬間こそが、この活動の最も大きな成果だ」

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