国際問題戦略研究所(IISS)のナイジェル・グルド=デイビスが、3月25日付のIISSのサイトで、ロシアのウクライナ侵攻に伴う西側企業のロシア・ボイコットの意味合いを論じている。
ウクライナ戦争との関連で誰しもが注目したに違いない現象は、西側企業のロシア・ボイコットの顕著な動きであろう。ロシアからの撤退ないしロシアでの事業中断を決めたすべての企業が、その動機が倫理的なものであることを表明している訳ではなく、事業継続の困難性を理由としているものも多いが、その場合にも、倫理観あるいは自身と周囲の市民社会のウクライナに対する同情心がボイコットを強く後押ししたことは間違いないであろう。この論説は、この現象を分析・整理した有益なものである。
この論説は、この現象を、企業が直面する政治リスクの変貌の最新の局面との見方を提示している。しかし、そうではなくて、国家が直面するその行動に対する懲罰という意味での新たなリスクと捉えることが出来る。
プーチンはウクライナ侵攻に対して西側政府が相当程度の経済制裁を発動することは覚悟していたであろうが、多数の西側主要企業が自主的にボイコットに及ぶとは予想していなかったに違いない。これは、ロシア経済を西側経済から遮断し孤立させることを狙う西側政府の制裁の効果を高め、重圧を加えるものである。プーチンはロシアのような大国を孤立させることは出来ないと述べているが、この発言は彼が孤立を怖れている証拠とも言い得よう。
企業によるロシア・ボイコットを、中国は特別の関心をもって注視しているであろう。国家に対する企業による懲罰的行動という意味で、中国にとって重要な教訓を含んでいると思われる。