2024年4月23日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月11日

 外交上の措置も強化されるべきである。米国は証拠を示し、中国に対処すべきである。米は唯一の被害者ではない。従ってサイバー防衛センターを各国と作るべきで、その一つを台湾におくべきである。言語上などの利点があるし、その上、中国指導者の嫌がる選択肢がこちらにあることを示し得る。

 米軍のサイバー関係の努力は既に探査、浸透、能力誇示に至っていると思われる。Stuxnet作戦の漏えいは米の利益を害したかもしれないが、中国は米に戦略的サイバー攻撃能力があることを知っている。抑止力を高めるために、米国は友好国とのサイバー演習などを通じて定期的に能力誇示をすべきである。

 米が保有する手段を良く使うためには省庁間調整が必要である。法、法執行、金融、情報、軍事的抑止が、ブッシュ政権の一時期、北朝鮮に成功裡に使われた。中国は北朝鮮ではないが、米はサイバー空間で無責任なことをしている連中を狙うべきである。

 放っておくと、中国の危険なサイバー戦略がより大きな紛争の可能性につながる、と論じています。

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 この論説は、最近の中国政府、具体的には人民解放軍によるサイバー攻撃の事例が明らかになったことを受けて書かれたものですが、いろいろなことを教えてくれる一方で、対抗措置に重点が置かれ過ぎているきらいがあります。

 サイバー攻撃には、情報窃取から重要インフラ攻撃、軍事通信網の阻害や攪乱など、種々のものがあります。テロの問題同様に、犯罪抑圧の手法で取り扱うべきもの、戦争手段として排除すべきものなど、国際的にどう取り扱うべきか、決まっていないことが余りにも多く、これを決めることが最優先課題です。

 まずは、中国も巻き込んで、国際社会として、国家または個人がサイバー空間でしてはならないことを決め、その上でその遵守を求めて行くことが必要です。中国が国際的ルール作りに参加しなければ、中国抜きで国際的規範が出来上がっていき、中国にとって不利益になることを、よく知らしめるべきです。体系的な国際規範の追求は現実的ではなく、合意出来るところから少しづつ決めていく必要があります。

 サイバーセキュリティでは、サイバー空間の軍事化や攻撃手段の開発競争を如何に防ぐかということにもよく注意する必要があります。そのためには、バランス感覚が重要で、攻撃手段の研究自体は意義あることとしても、それに軽々に依存するのは適切ではないでしょう。司法、金融、外交的手段を重視する方が効果的と思われます。

[特集] サイバー戦争

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