2022年9月26日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年6月29日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 指定されると各省庁からさまざまな支援が受けられ、活用事例だけでも41件もある。その中身は鳥獣害対策や買い物機能確保、LEDによるライトアップイベントの支援、伝統文化親子教育事業などてんこ盛りで、地域振興となれば支援対象になる。

 星峠の活用事例として「棚田の保全活動や棚田米の販促を実施」としており、地域おこし協力隊も支援している。実際、星峠の地域おこし協力隊は農家民宿も運営しており、観光に来た人でも宿泊できるようになっている。

棚田地域振興法でも「棚田は残らない」

 農水省が2019年に実施した「農業・農村の多面的機能及び棚田に関する意向調査」によると、回答した全国の20歳以上1012人のうち、全ての棚田を残したいと回答した人の割合は16.6%、知名度は高くないが地域で守ろうと頑張っている棚田は残したいと答えた人が51.4%を占めており、両方を合わせると68%。約7割の人が残したいと答えている。

 こうした調査や国による多面的な支援策が講じられているにもかかわらず、棚田を守っている生産者の山岸さんもそのコメを販売している成川さんも棚田が残るとは思っていない。なぜなら、棚田でコメ作りをする人がいなくなるからである。

 その要因はこれまで述べてきたように、小ロットでの生産が強いられる中で「棚田米」という区別化ができず付加価値をつけられないのに加え、物流費の高騰でビジネス化ができない現状、山間地域の人口減少と高齢化が進んでいるためだ。このことは棚田だけの問題ではなく日本のコメ作りが抱えている構造的な問題である。解決策は地域振興のイベントだけでは到底及ばないだろう。

 棚田は日本農業の縮図と言え、小手先でない抜本的な「地域振興」が求められる。

  
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